国際情報

もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか

北朝鮮の陸・海・空軍の実力は米軍に遠く及ばないが…

 トランプ米大統領は10月1日、北朝鮮に核・ミサイル問題で対話の意思の有無を尋ねていると公言したティラーソン国務長官に、「時間の無駄だと伝えた」とツイッターに投稿した。9月26日の記者会見でも、軍事的な選択肢の準備は完全に整っており、北朝鮮にとって壊滅的なものになると警告したが、本気で「武力行使も辞さず」と考えているのだろうか。当然、軍事衝突が起きれば北朝鮮の猛反撃も予想される。

 朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏が、ミサイルだけではない北朝鮮の攻撃力について分析する。

 * * *
 米国の武力行使に対する北朝鮮軍の反撃の手段は、戦略軍が保有する弾道ミサイルだけではない。100万人以上の兵力を保有する地上軍、海軍、空軍も反撃することになる。北朝鮮軍は、日本、韓国、米国(グアム)へ弾道ミサイルを発射する一方で、在韓米軍と韓国軍の北進を防ぐために韓国へ侵攻する。

 北朝鮮軍は「烏合の衆」と揶揄されることがあるが、実際のところ、どのような戦闘を行うのか再確認することにしたい。

◆地上軍─ソウルを攻撃できない可能性も

 米軍の武力行使に対して、北朝鮮軍は弾道ミサイルを発射するとともに、非武装地帯付近に配備されている長射程砲や多連装ロケットを発射して反撃する。ソウルを攻撃可能なのは300門に限定されるが、実際にソウルが「火の海」になるかどうかは別として、ソウルに砲弾が落下すれば、少なからず被害が出ることは間違いない。

 北朝鮮軍は約102万人の地上兵力を保有しているが、このほかにも準軍隊である「教導隊」(17~50歳)約60万人、「労農赤衛軍」(17~60歳)約570万人、「赤い青年近衛隊」(14~16歳)約100万人があり、これらが北朝鮮の防衛に動員される。

 また、米韓軍の海岸からの上陸や空挺作戦(落下傘降下)に備えるための兵力は残すことになるため、すべての地上兵力が韓国侵攻へ投入されるわけではないが、半数以上の地上兵力が非武装地帯の突破を試みるだろう。しかしこれは容易なことではない。

 北朝鮮軍の侵攻に備えて、韓国陸軍は非武装地帯沿いに12個師団を配備している。このことから、非武装地帯に直接張り付いている歩兵大隊は72個となる。本稿では詳しい計算は省略するが、このうちの韓国軍1個大隊を無力化(30%程度の損害を与える)するためには、砲弾を10万4615発撃たなければならない。

 これは、あくまでも韓国軍の歩兵大隊1個に対する攻撃である。1個大隊が布陣している面積は、正面幅3.5km、縦深2kmにすぎない(非武装地帯の総延長は248km)。極めて狭い突破口を開けるのにこれだけの弾数が必要になるのだ。

 しかも、韓国軍の防御ラインは一線ではなく、ソウルに最も近い北朝鮮軍第2軍団の正面では最大6線の防御ラインが配備されているといわれているので、乱暴な単純計算だが最低でも60万発は撃たなければならない。

 そもそも、ソウルが「火の海」になったり、北朝鮮軍が非武装地帯を電撃的に突破するという考え方は、韓国軍の反撃を一切考慮していない。韓国の尹光雄国防長官は2004年10月、北朝鮮軍の長射程砲が射撃を開始してから、韓国軍は多連装ロケットを6分以内、長射程砲を11分以内に撃破することが可能と述べている。

関連記事

トピックス

眞子さんと佳子さま(時事通信フォト)
《眞子さん出産発表の裏に“里帰りせず”の深い溝》秋篠宮夫妻と眞子さんをつないだ“佳子さんの姉妹愛”
NEWSポストセブン
「子供のころの夢はスーパーマンだった」前田投手(時事通信フォト)
《ワンオペ育児と旦那の世話に限界を…》米国残留の前田健太投手、別居中の元女子アナ妻が明かした“日本での新生活”
NEWSポストセブン
宮内庁は小室眞子さんの出産を発表した(時事通信フォト)
【宮内庁が発表】眞子さん出産で注目が集まる悠仁さま成年式「9月ならば小室圭さんとともに出席できる可能性が大いにある」と宮内庁関係者
NEWSポストセブン
若松次郎を演じる中島歩(左)は歴史上のある有名人の子孫にあたるという(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』ヒロインの“婚約者”を演じる中島歩は国木田独歩の玄孫 「中学と高校の国語教師の資格取得」に見える文豪の片鱗
週刊ポスト
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《第1子出産》“叱らない子育て”が育んだ小室圭さんと“プリンセス教育”を受けた眞子さんが築いていく“これからの教育方針”「佳代さんはトイレトレーニングもせず」
NEWSポストセブン
田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
「大宮おじ」「先生」こと飯田光仁容疑者(32)の素顔とは──(本人SNS)
〈今日は〇〇にゃんとキスしようかな〉32歳無職が逮捕 “大宮界隈”で少女への性的暴行疑い「大宮おじ」こと飯田光仁容疑者の“危険すぎる素顔”
NEWSポストセブン
明るいご学友に囲まれているという悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さまのご学友が心配する授業中の“下ネタ披露” 「俺、ヒサと一緒に授業受けてる時、普通に言っちゃってさぁ」と盛り上がり
週刊ポスト
ラウンドワンスタジアム千日前店で迷惑行為が発覚した(公式SNS、グラスの写真はイメージです/Xより)
「オェーッ!ペッペ!」30歳女性ライバーがグラスに放尿、嘔吐…ラウンドワンが「極めて悪質な迷惑行為」を報告も 女性ライバーは「汚いけど洗うからさ」逆ギレ狼藉
NEWSポストセブン
田中圭の“悪癖”に6年前から警告を発していた北川景子(時事通信フォト)
《永野芽郁との不倫報道で大打撃》北川景子が発していた田中圭への“警告メッセージ”、田中は「ガチのダメ出しじゃん」
週刊ポスト
TBS系連続ドラマ『キャスター』で共演していた2人(右・番組HPより)
《永野芽郁の二股疑惑報道》“嘘つかないで…”キム・ムジュンの意味深投稿に添付されていた一枚のワケあり写真「彼女の大好きなアニメキャラ」とファン指摘
NEWSポストセブン
2日間連続で同じブランドのイヤリングをお召しに(2025年5月20日・21日、撮影/JMPA)
《“完売”の人気ぶり》佳子さまが2日連続で着用された「5000円以下」美濃焼イヤリング  “眞子さんのセットアップ”と色を合わせる絶妙コーデも
NEWSポストセブン