ライフ

西郷隆盛が遺した「美田」名言、子育てへの教訓ではなかった

「美田を買わず」ホントの意味は?

 本来の意味から逸れた解釈が定着してしまった格言がある。西郷隆盛が言ったとされる「児孫のために美田を買わず」は、いまや「子供を堕落させてしまう恐れがあるから財産を残すな」と解釈される。

 しかし、西郷が言い遺したかったのは、「子供を甘やかすな」という教訓ではなかったという。『ざんねんな偉人伝』など歴史関係の著作が多くある作家の真山知幸氏はこう説明する。

「この言葉は子育て論ではありません。子孫に財産を残そうと、私利私欲に走るようでは志を遂げることはできない、志を果たすためにはすべてのものを犠牲にする覚悟を持て、という意味で、自分自身への戒めの言葉だったのです」

 格言が納められた西郷の金言集『南洲翁遺訓』には、「命もいらず、名もいらず」の言葉もある。死を賭してまで日本のために働いた維新志士の格言だ。

“死を賭して”といえば、肥前国佐賀藩士・山本常朝が『葉隠』の一節で説いた「武士道と云うは、死ぬ事と見つけたり」も有名だ。戦時中には玉砕を肯定する言葉として利用されもしたが、これも本来の意味ではない。歴史研究家の井手窪剛氏が指摘する。

「正しい解釈は、人間は誰しも生きて死ぬという無常観についての言葉で、それを前提として、自分の思うように生きよと説いているんです。死ぬためではなく、生きるための言葉なのです」

 今後、若者に訓を垂れる際には、格言を用いるだけでなく、「実はこの言葉の本当の意味はだなぁ」と付け加えるのも忘れてはいけない。どちらにしてもウザがられそうだけど。

※週刊ポスト2017年10月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン