《辛いものやなまぐさいものを食べずに、静かな所に居るようにし、男性はその妊婦に力を使わせてはなりません。力を使わせると身体のあらゆる関節をわずらいます》(巻二十二第一章)
当時も、イクメンは求められる存在だったようだ。同時に、妊婦の「心の持ちよう」にも注意を促す。
《妊娠中は気高い心を持ち、余分なもののない、さっぱりとした清らかな部屋に、いつでも正しい姿勢で坐ること。(中略)考えぶかく、心なごやかに人と協調してすごせば聖となる子を産み、不慮の災難に遇うことはない》(同第二章)
『医心方』が紹介するさまざまな病気の治療法には、薬を用いたものも多い。しかし妊婦の病気に関しては、現在と同じように配慮を促している。
《懐胎したときや妊娠中に病気に罹った場合は、胎児や妊婦に悪影響を及ぼす薬物による治療を避けねばならない》(巻二十一第一章)
エコー検査がなく、あととりに男児が求められた時代、胎児の性別は今以上に重大な関心事だった。それゆえ、同書は以下のようなさまざまな「判別法」を紹介している。
《〔妊婦を〕南に向って歩かせ、呼んで引き返させる。そのときに左に回れば男、右に回れば女である》(巻二十四第三章)
《妊娠三ヶ月の婦人の尺脈を数えたとき、左手の尺脈だけが大きいのは男、右手の尺脈だけが大きいのは女、両方とも大きいのは双児である》(同)
妊娠2か月までの妊婦の臍下に3回灸をすると、女の胎児が男に変わる、との記述もある。
※女性セブン2017年11月2日号