睡眠負債のパネルディスカッションをする西野精治氏、浅田真央さん、高岡本州氏
被験者は最初は13時間や12時間ぐらい寝られるものの、この生活を続けると、3週間後には8.2時間睡眠で固定されるようになった。14時間ベッドに入るものの、以後8.2時間のままなのだ。被験者にとってこの8.2時間こそが“理想の睡眠時間”であり、7.5時間寝ていた頃と比較し、0.7時間、つまり毎日約40分睡眠時間が足りなかったというのである。この「負債」が3週間かけて返済されたということだ。
また、講演では、西野氏が睡眠において重要なのは「量」だけでなく「質」であることも明かした。そのためには寝る前と睡眠時の体温の差が多いことがカギとなるのだという。温泉に入ることなどによって体温の上昇でそれがもたらされるほか、高反発で通気性の良いマットレスで寝た場合は反発の弱い柔らかいマットレスと比べ、体温の下降がスムーズになったという。「(体温が)グンと下がった時に深い睡眠が得られる」(西野氏)との実験結果が出たのだ。寝る前の入浴の有用性については、西野氏は温泉に入る猿の写真を紹介し「猿も知っていた温泉の効果」と語り、笑いを誘っていた。
西野氏はエアウィーヴのマットレスを実験に使ったが、元々同社・高岡氏からは「ネガティブな結果が出ても構わない」と2012年に言われ実験をしたところ、通気性が良く高反発なマットレスでは明確な差が出たとのこと。
◆「睡眠負債」解消のための5か条
「私の研究の目的は、人の睡眠疾患を突き止め、新たな治療法を見つけたいということにあります。当時はあまりマットレスには関心がなかった。当初、『寝具(の嗜好)は個人差があるので、そんなに差が出ない』と高岡さんに言いました。こうしたオファーを受けるにあたって大事だったのは、『結果がネガティブでもいい』ということで、その条件でも良かったので引き受けました。すると、体温に対する効果が出たのでびっくりしました」(西野氏)
西野氏は「睡眠負債解消のための5か条」も発表したが、それは以下の通り。
【習慣編】
1.規則正しい生活習慣を心がける
2.就寝前はリラックス
3.体温調節は良質睡眠の要(入浴、運動、寝具)
【リズム編】
4.目覚めたら朝日を浴びて体内時計をリセット
5.良質の睡眠は朝からの行動できまる(メリハリ)