釈明会見で苦い表情を浮かべた吉永泰之・スバル社長
「当社において検査員を育成する場合、まずは候補者に正規の検査員が必ずマンツーマンで付き、検印は正規の検査員が押す。検査のスキルが100%身に付いたと確認されるまで訓練する。検査員の資格を得た従業員はもちろん自分で検査にあたることができる。ところが我々の場合、その訓練と正規検査員の間にグレーゾーンがあった」
グレーゾーンとは、完全に検査スキルを身につけたと認定されたが、実際に試験を受けていない人材のことだ。試験の実施を怠っていたのではなく、100%できると一人でやってみて実証して見せろという修業期間を独自に設けていたというのである。
「検査は工程ごとにチームを組んでやることになっており、複数人数の中に修業期間の人材を1人入れ、研鑽させていた」(吉永社長)
修業期間の人材はもちろん検印を持たないが、有資格者の検印を押していた。スバルは長年、それは組織代行(旅行代理店の航空券発券業務のように有資格者がいれば実際の業務は無資格者が行うことができ、責任は有資格者に帰する)の範囲として認められると法を解釈してきたという。
「日産の無資格者による完成検査問題で国交省から調査指示を受け、問い合わせをするまでこれが問題だと考えていなかった。認識が甘かった」(吉永社長)
常識的に考えれば、検査スキルが100%ついた段階で試験を受けさせてもいいのではないかという疑問が浮かぶ。会見でも当然そういう疑問も投げかけられた。吉永社長は「今にして思えばそうしておけばよかった」と釈明した。
会見でスバルの問題が、いわば技量100%の無資格者問題であったことが明かされるのを聞いて感じたのは、これは日本のモノづくりの根幹にかかわる話だということだ。