「不動産売買の疑惑なんて、今回の騒動にはほとんど関係ないんです。実際に起きていたのは、神社本庁の現総長である田中恆清氏とNo.2のB氏による権力闘争です。過去の通例でいえば、本庁の総長は2期6年。田中氏は昨年で6年の任期を終え、順当にいけばB氏が次の総長になるはずだった。そして彼の子飼いの役員が幹部ポストを独占する構図を描いていた。
しかし、昨年5月の評議員会で田中総長の3期目続投が決まった。これに怒ったのがB氏です。定年間際の彼は、ここで総長になれなければ、キャリアが終わってしまう。あらゆる手を使って“田中降ろし”を始めたB氏一派が目をつけたのが、先の宿舎の不動産売買でした」
内紛の本質はトップとNo.2の出世争いで、不動産売買はそのダシに使われただけだというのだ。A氏が続ける。
「B氏の子飼い役員の中には、昇進の前祝いをする者までいた。全てがひっくり返ったので、慌てて2年前の不動産売買記録を持ち出しただけです。その“実行部隊”として動いたのが稲氏と瀬尾氏だった。また調査委員会の発足を命じたのはB氏本人です。しかし、彼のもくろみは外れました。最初から無理があるクーデターだったんです。自ら外部の弁護士まで招いて調査委員会を率いたB氏は、『嫌疑なし』という判断を受けて立場を失いました」
結果、B氏は今年8月に副総長を辞任している。
◆Bさんとは何度も話し合ってきた
A氏が最も憤るのは、稲氏と瀬尾氏が東京地裁に提訴した“日にち”にある。
「10月17日は、伊勢神宮で『神嘗祭(かんなめさい)』が行われた日です。五穀豊穣を願い、天皇陛下が皇居で刈り取られたお米が、伊勢神宮にお供え祀られる大切な儀式。しかも、今年の神嘗祭は、天皇陛下のご息女、黒田清子さん(48才)が8月に伊勢神宮の祭主に就任されてから初めて勅使参向された祭典です。いわば、清子さんの“祭主デビュー”の日。これに、他ならぬ神社本庁の人間が提訴という形で水を差すのは、あまりにも無礼です」(A氏)
実際、神社本庁も本誌取材にこう答える。