1976年に資生堂のキャンペーン「ゆれる、まなざし」でモデルデビューし、その後女優としても活躍した真行寺君枝が2002年に発表して大きな話題になったのが写真集『I LOVE YOU』(バウハウス刊)だ。大反響を呼んだ伝説の写真集について、真行寺が振り返る。
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この写真集は当初、東南アジアを舞台にするはずだったんです。でも私の希望でロサンゼルスになりました。
ヌードになることは私にとってひとつの壁でした。そのことで煩悶している私にカメラマンの沢渡朔さんが「ヌードはやらしいだけじゃないんだよ」と仰ってくださいました。そのときは、その言葉の意味がよくわからなかったのですが、今はよくわかります。
私は、この撮影に何か意味を見出したい、と思いロスに旅立ちました。プラトンの『饗宴』を携えて。この撮影は愛のひとつの有り様であるエロスについて、私なりに言語化しながら探っていく旅でもあったのです。
出版当時はまだ客観的にこの写真集を見られませんでした。15年経ってようやく、ひとつの作品として見られるようになりました。アートとビジネスのバランスがとれた写真集だと思います。
【プロフィール】しんぎょうじ・きみえ/1959年、東京都生まれ。1976年、資生堂・秋のキャンペーン「ゆれる、まなざし」でモデルデビュー。1979年、TBSドラマ『沿線地図』で女優デビュー。映画にも多数出演。2016年にコスメテックメゾン「うつくしく」を創業。バラエティ番組『今夜はナゾトレ』(フジテレビ系)ではナレーションを担当している。
撮影■沢渡朔
※週刊ポスト2017年11月24日号