「本来の順番は『実言、実行、実心』なんですよ。僕は順番を変えたんだ。本当に心で思っていることを、正しい言葉で表現して、表現したことは責任を持って実行するということでしょう。実心というのは最初に来なければいけないはずだ、と思う。
同時に僕が弁えてきたのが、厳然自粛、つまり厳しく自分を粛むということですよ。そうして自分を律してきた男がですよ……、ましてあの時(2009年3月期)はリーマン・ショックで会社全体として赤字(約3500億円)が計上される時だった。そんな時に、100億円や200億円の不正を知っていて、僕が有耶無耶にするなんてことはあり得ません。そんなことは絶対にない。今までの僕の生き方を見てください、と言いたい」
西田の怒りの矛先は、調査した委員にも向かった。
「第三者委員会の人たちは、僕が部下に命じてチャレンジした50億円や100億円を“多額”なチャレンジだとしている。それは日常業務として弁護士をしている人にとっては多額かもしれないが、僕らがやっていた事業規模は1兆円ですよ。1兆円の中の50億円や100億円はわずか1%に過ぎない。それが果たして多額ですか?」
さらに語気を強める。
「チャレンジでもなんでもない。言わば日常茶飯事のことですよ。50億円のチャレンジ、100億円のチャレンジなんて、『お前達がんばれ。このままだと事業が立ち行かないぞ』程度のことですよ」
(敬称略)
●取材・文/児玉博(ジャーナリスト):新刊『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)は11月17日発売。
※週刊ポスト2017年11月24日号