そのときだ。そばに隠れていた警察官がスーッと近づき、「警察だ!」男は金をぶん投げて逃げようとしたが、遠藤さんは思わず男の腕を掴んでこう叫んだ。

「ここさ、おまわりさんがいっぱいいるぞ。全員で囲んでるから逃げようがねえ!」

 男を囲んだ警察官は全部で7人。男は観念してその場で逮捕された──。いったい何が起きたのか。

 実は遠藤さんは途中で詐欺に気付いたのだが、警察に協力して“騙されたフリ”を続けていたのだ。遠藤さんが振り返る。

「途中までは完全に騙されていました。お金を用意して息子に電話したところ、怪しんだ息子が孫の会社に確認し、孫は普通に働いていることが分かったんです。それで頭に来たから『捕まえてやろう』と思って、警察に相談して一緒に東京まで行った。犯人に渡した100万円は警察に用意してもらったものです。空手をやっていたし犯人を怖いとは思わなかった。ただ、逮捕されたのは金を取りに来た男だけで、孫を名乗って電話してきた男はまだ逮捕されてない。そのことが残念でなりません」

◆作戦で道路まで封鎖

 実は最近、遠藤さんのように騙そうとする犯人たちに騙されたフリをして、逮捕に協力する高齢者が増えている。

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