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漁獲量はわずか──それでも下関が「フグの本場」の理由

フグの季節がやって来た

〈冬の雪冬の寒さは ふくのためふくあるがため 春菊と橙あれば その味はまた世界一〉

 芥川賞作家・火野葦平が書いた詩「ふく(魚の王)」でも讃えられた、フグの美味しい季節がやって来た。旬は秋の彼岸から春の彼岸までと言われるが、白子は2月から大きくなり、美味しくなる。

 フグの世界一の取扱量を誇るのが、山口県下関市の南風泊市場。日本で唯一のフグ専門の卸売市場だ。各地の漁場や養殖場から、生きた天然物・養殖物が本州最西端の同市場を目指して陸路、海路、空路で運ばれてくる。

 フグの中でも最高級とされる“フグの王”はトラフグ。南風泊市場でも花形的存在だ。午前3時20分。セリの開始を告げるベルの音が鳴り響く。

「1パイはええか」
「1パイはどうか」

 競り人が張り上げる威勢のよい掛け声で、場内が活気づく。筒状の黒い布袋の中で競り人と仲卸人が指を握って値段を決める「袋競り」は、南風泊市場の名物とも言える独特の取引方法だ。取材日(11月初旬)は、天然トラフグ約1トン、養殖トラフグ約5トンがセリにかけられた。南風泊市場を運営する下関唐戸魚市場株式会社の天然物競り人、松浦広忠さんが説明する。

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