相手の体に触れずに、約30cmの間隔を置き、後ずさりする体力的に劣った被害者に詰め寄った行為を暴行と認定し、被害者が転んでケガをしたことで、傷害罪の成立を認めた事例もあります。この場合、手を出さなくても、すぐ届く間隔を保って追い詰めたことが、大きな要素になったと思います。
あなたが肩に置いた手を嫌がって払いのけようとする相手を押さえつければ暴行です。酔って、口論を吹っ掛け、目を据えて睨みつけながら肩に手を置き、振り払うと殴りかねない気勢を示し、相手が我慢せざるを得なかったとすれば脅迫罪が成立します。相手が暴力を恐れない大物であれば暴行罪の心配はありませんが、飲食店で公衆に迷惑をかけると「酔っ払い防止法」で警察に保護され、不名誉なことになります。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年12月15日号