1番はバレエの振りは、うろ覚えの段階で直ぐに試験となるし、面接も、人の受け答えを聞けないから、「特技は長距離走です!なので、ここではできません!」なんてアホな事を、私は試験官の前でいけしゃあしゃあと満面の笑みで言えたわけである。
しかし緊張やプレッシャーを感じる時間は全くなく、結果、それが良かったのだとも思った。先日、オスカープロモーションの美少女コンテストの審査員をしてわかった事…1番は前がない時点での採点、比べる対象がなく点数をつけにくいのだ。
しかし何十人と審査した後でも、最初の子は見るぞというこちらの心意気が最高潮だからなのか、かなり時間が経過してもインパクト大で鮮明に覚えているのだ。改めて思った、私はラッキーだったと。受験勉強もろくにしていなかった私が宝塚に受かったのは、この1番を引いたから。緊張する時間もなく、伸び伸びと大声を出して自分らしく審査員の方々の前に存在したからではないかと。
話は戻り、専業主婦の母と対照的なのが、結婚し出会った義理の母だ。幼い頃から70代の今に至るまでバレエを続け、今もバリバリ講師をしていらっしゃる。しかも仕事が忙しいのに、家の事も完璧にこなすスーパーウーマン。お義母さんの前では、嫁であり、勿論、嫁姑関係ではあるのだけれど、お互い仕事を持った女性としての理解も大きく、そんな価値観を分かち合える関係にも深い感謝がある。
そのお義母さんから、晩秋には贈り物が届く。大好きな栗の渋皮煮だ。「お義母さん、栗の皮は厚くてむくの時間かかりません? こんなに沢山、手が痛いでしょう…」と聞くと、「今、100円ショップとかに簡単にむけるいいのがあるのよ~」なんて、大変さをおくびにも出さない。私は尊敬と自己嫌悪…時間がないなんて、言い訳だなぁと、お義母さんを見ていると深く思う。
いつだってお義母さんは人の為に走り回り、お世話するのだ。サラッと大変な事を沢山する方はいるのだ。
そんな義母の息子、私の夫は、私が目いっぱい仕事して疲れて帰ると、「じゃあ、家の近くに食べに行こう」と柔軟に提案してくれる。私、妻してないなぁ…と思いつつもそんな言葉に甘える日もある。
“幼い頃、私は専業主婦になりたかった”
あの時の気持ちが空を舞う。未だ着地せずに。…正解はやっぱり今もわからない。
■撮影/渡辺達生
※女性セブン2017年12月21日号