「幕末青春グラフィティ」シリーズを撮り、後に非業の最期を遂げる河合義隆監督が最も信頼できる演出家だったという。
「河合監督は考え方のレベルが違っていました。『映像の空気で嘘を吐くな』と言うんです。ただ立っているだけの場面でも、『なぜそこにいるのか』『何を考えているのか』が見えないと怒られる。『そういうのが見えないんだったら、演じる必要はない』って。それまでの僕はそういうことを考えてもみなかった。
それから言われたのは『それ、よがりだ』とも。自分では気持ちを入れて演じているつもりでも、そう見えないことってあるんです。そういう時はキチッと言ってもらわないと。自分の考えたやり方が全てではないですから。今の現場はすぐ『OK』が出てしまうのがさびしいです」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。『週刊ポスト』での連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2018年1月1・5日号