「大幅な改修やリフォームにも届出がいる。現在の風営法だと”今のまま”やっていくか”潰す”という二択になってしまいがちなんです」
働く女性にとっても、問題は深刻だ。神奈川県川崎市のソープランドに勤務するゆうりさん(源氏名・25歳)も、勤務のたびに不安を覚えるという。
「店は築50年超のコンクリート造のビルですが、路地の奥まった場所にあって、火事が起きても消防車が通れないそうです。店の外壁も、見える表以外はボロボロ。休憩部屋は隙間風もすごくて、水漏れもある。スプリンクラーなどの消火設備も満足じゃない。まさかと思っていたことが、大宮で起きた……。安心して仕事ができないのです」(ゆうりさん)
安心して働きたいのであれば、なぜ転職しないのかと思うかもしれない。だが、風俗関係で働くと勤務時間の問題などから転職のためのスキルを積むことが難しく、また転職の際に過去を問われるケースが多いため、他業種へ転身するのが非常に難しいという現実がある。未来につながるキャリアデザインより、安心して目の前の仕事をするのがせいいっぱいだ。
また、SNS上では「ソープなんか潰せ」「そもそも違法だ」との声も上がっているが、だからと言ってこのまま、ソープランドを危険な場所として放置することも許されるはずはない。労働者の安全を無視したこれらの規制によって、結果として風俗に関わることの危険性を高めたり、反社会勢力を呼び込みやすい環境を作り出している。よく「時代遅れの風営法」などと揶揄されるのは、法律を古いままにしておくことで、前時代的な労働環境を生み出しているからだ。
その結果、古いソープランド経営者が、仕事としての将来性を考えた末に、反社会勢力に経営権を秘密裏に売り渡したりする事例も多く、現在のソープランドを取り巻く環境はより複雑化している。関係各局には、店舗型風俗店をなくしたい本音のためにクサいものにふたをして済ませるのではなく、今一度、時代にあわせた法律や規制のあり方を検討してもらえないのだろうかと強く思う。