そして、6月2日合宿先のニヨンで岡田監督はカズ落選を発表。会見で理由をこう話した。
「カズに関してはトップの中で今、城を柱として考えていて、交代でどういう選手を使っていこうかと。アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカという試合を想定した場合に使うチャンスがないと判断しました」
当時のカズはヴェルディ川崎でMFとして起用されていたこともあったが、W杯による中断までJリーグで4得点。4試合連続ハットトリックを記録するなど絶好調だった中山雅史(ジュビロ磐田)らと比べれば、物足りなさを感じさせる数字だった。仮に日本代表に選ばれていたとしても戦力として通用したかどうかは意見の分かれるところだ。スポーツライターが話す。
「岡田監督はピッチ上で働くかどうかだけを考えて決断を下したようですが、カズの役割はそれだけではなかった。マスコミの批判を一身に背負う役割を果たしていた。カズが外されたことで、本格的に『エース』と呼ばれるようになった城は、それまでにないプレッシャーを感じたと語っています。控えで出番がなくてもカズがメンバー入りしていれば、城はもっと伸び伸び働けたはず。
そういう意味で、防波堤になれるカズはピッチに出なくても間違いなく戦力だったと思います。この時は岡田監督だけでなく、メンバー発表前にマスコミからもそのような論調はほとんど出なかった。日本がW杯を経験していれば、ベテランの重要性を鑑みて、カズはメンバー入りしていたのではないでしょうか。2010年の南アフリカ大会でGKの川口能活が直前でメンバー入りしたのは、岡田監督が過去の経験を生かしたのだと思います」
20年が経とうとしている今も、1998年フランスW杯でのカズ落選については様々な意見が噴出している。日本サッカーの歴史の中で、カズという存在の大きさが垣間見えるだろう。