他方、がんの大きさが2~5センチほどの胃粘膜下腫瘍に対する治療法として開発されたのが、CLEAN-NETだ。これは内視鏡と腹腔鏡を組み合わせて行なうもので、2つのカメラを使うことにより、切除する胃を最小限に留めることができる低侵襲な治療だ。
患者に全身麻酔を施し、口から内視鏡カメラを挿入して胃の中のがんと、その周辺の切除予定範囲に印をつける。その後、腹部に5か所程度開けた小さい傷から腹腔鏡と手術器具を挿入する。
「胃の外側から腫瘍の周りの切除予定線に沿って、胃壁の一部を切開します。そこから腫瘍と一緒に周囲部分を胃壁の外に持ち上げ、腫瘍と持ち上がった胃壁の一部に自動縫合器をかけ、この部分だけを切除します。切除した組織は、腹腔内からへそに開けた創を通して体外に出し、回収します」(井上センター長)
この治療では、腫瘍と腫瘍に関連するリンパ節の両方を切除することが可能だ。進行したがんに対しても開腹ではなく、腹腔鏡を利用した腹腔鏡下胃全摘術を実施する方法もある。胃切除後の消化管の吻合も腹腔鏡で行なうため、傷口を最小限に留められる。
胃がんは、早期発見・治療を行なえば完治も可能なので、50歳を過ぎたら年に1回の内視鏡検査を推奨したい。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年1月26日号