「人間は誰でもいい思いをしたり、おいしいものを食べたりしたら誰かに伝えたくなります。でも昔から日本では“慎ましさ”が好まれる傾向があり、たとえば高そうなケーキをツイッターでアップしたら、『自慢しやがって』と叩かれることが多かった。

 一方でインスタを好む層は、そのケーキを『いいね!』と素直に褒めてくれます。文字にすると生々しい自慢でも、きれいな写真は視覚に訴えるので嫌みが消える。インスタの登場で日本もようやく、“他者の幸せ”を共有できるようになりました」(中川さん)

 私たちに新しい価値観を提示した一億総“映え”社会はこれからどんな局面を迎えるのだろうか。『CanCam』の塩谷薫編集長が言う。

「2000年代に紹介制のSNS『mixi』が一世を風靡し、その後『Twitter』や『Facebook』が流行したように、これまでもその時代の若者に合った新しいツールが生まれ、移りかわってきました。

 ツールに限らず、ひとつのブームを巻き起こしたアーティストやドラマでも、そのブームが去った後は、本当に好きな人だけが残る。最終的には写真を撮ることや見ることに喜びを見出す人や、ライフスタイルにインスタの特性が合致する人が使い続けるようになるのではないでしょうか」

 写真を撮って現像し、アルバムに貼ってみんなでその時の喜びや悲しみを共有する。昔から私たちが享受してきたシンプルな喜びが、一億総インスタ映え社会の先にあるのかもしれない。

※女性セブン2018年2月1日号

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