都内在住の40代男性・Aさんは寒空の下、自宅のガレージの前で愛車を洗っている最中に突然意識を失い、その場に倒れ込んだ。目が覚めたのは病院へ向かう救急車の中。検査した結果、脳動脈瘤の破裂──「くも膜下出血」だった。Aさんは、前出の福永氏のもとに運ばれてきた患者である。
「脳動脈瘤が破裂した原因は、外気温の低さに加え、冷たい水に素手で触れていたため、血圧が上昇したことが大きい。そこに力を込めてゴシゴシと車を磨いていたことが重なって血圧が一気に上がり、動脈瘤は風船が膨らむような形で破裂したのです」(福永氏)
寒暖差が激しい日は、「脳梗塞」のリスクも高まる。
「寒暖差によって“血栓”ができ、その結果、血管が詰まって脳梗塞になるのです」(福永氏)
近畿大学医学部付属病院講師で病理専門医の榎木英介氏は、高齢者が冬の寒暖差によって「突然死」するケースは多いと語る。
「前日よりぐんと冷え込んだ日の朝は、『今日は病理解剖があるかもしれないな……』と思うことがあります。これまでの経験上、そんな日は急性大動脈解離や急性心筋梗塞で突然死した方の病理解剖をすることが多い。
寒暖差で血圧が上がっても、若い人なら血管がしなやかで丈夫だからなんとかなる。しかし高齢になるほど冬バテによる血管のダメージは大きいので、急な血圧の上昇に血管の壁が耐え切れなくなってしまうのです」