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2018.02.03 07:00  週刊ポスト

藤竜也 「映画を撮ることは母の胎内で遊ぶような感覚」

最新作では孤高の老ハンターを演じた

 取材を控え、撮影の準備や打ち合わせでバタバタとせわしないスタジオの一角で、俳優・藤竜也(76)はひとり静かにその時を待っていた。コーヒーを飲んでくつろぐでも、煙草をくゆらすでもなく、背筋をスッと正してただ真っ直ぐに一点を見据えたまま──。独特のオーラに包まれたその佇まいは、精神を研ぎ澄ませて己の魂と対話しているかのように感じられた。

 ほどなくしてインタビューが始まると、まもなく公開の主演映画『東の狼』について、藤はぽつりぽつりと、想いをしぼり出すように言葉を紡いだ。

「魂をさらわれちゃった、というのかな。監督の悩める魂を僕の中へギュウギュウねじ込まれたような……。それはもうきつい、過酷な現場でしたよ」

 次世代を担う若き才能を育む「なら国際映画祭」の映画制作プロジェクトの一環として誕生した今作。1984年生まれのキューバ人監督、カルロス・M・キンテラが手がけ、100年以上前に狼が絶滅した東吉野の山村を舞台に、藤が演じる孤高の老ハンターが幻の狼を熱く追う姿をドラマチックに描いた。

「物語の山場で老猟師が狼と対峙して銃を構えるシーンがあるんですが、現場は暗闇の洞窟でね。かすかな光の先にカルロスの顔が浮かんだら、なんともいえない悲しげな、戸惑ったような表情で僕が演じる老猟師、つまり彼自身を見つめていた……。これは監督の魂のポエムだと悟ったけれど、キューバの若きインテリの魂の咆哮なんてものは想像がつかない。僕はその異質な魂に憑かれたまま、狼に憑かれた老猟師をただ一生懸命やろうと挑んだ」

 異国の監督の苦悩や哀しみを受け入れ、役柄を通して吐き出す行為を繰り返す日々。消耗も激しかった。

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