主演映画「東の狼」はキューバ人監督の作品


「彼の魂を宿して過ごす日々は、ひたすらに苦しかった。毎日が果てしなく重い。吉野へ移り住んで撮影した1か月間、息抜きできたのは近所のコンビニ。10キロも離れているんですが、そこへ朝4時頃に出かけてしばらく看板の灯をぼおっと眺めるんです。あの灯は全都市共通だからね(笑い)。そこで少し自分を取り戻すと、活力も少し出てきた。クランクインの頃に咲いていた吉野の桜にも心が救われましたよ。僕が借りていた村営住宅の前に桜があって、それは嬉しかった。やっぱり春になると毎年、『あぁ、今年も桜がみられた!』という感慨があるのでね」

 もがきながらも、異文化で育った監督との共同作業は刺激にもなった。

「完成した作品は哀しみに満ちていたけれど、その中から人間の生きる力強さが否応なしに伝わってきた。そこには感心しましたねぇ。意思疎通も不便でわからないことがたくさんあったなか、僕が惹かれたのは物語性。老猟師はもういない狼を信じていて、一途に追い求める。ロマンチックじゃないですか。もしかしたら、僕らの中には狼が潜んでいるのかもしれない」

 その実態はわからないと首を傾げながらも、「僕にはもうない」と断じる。

「若い時にはそれらしきものが自分にもあった。喩えれば、猛々しさや壊したいという欲望。あの頃は先行きが見えなくて、それでも進まないといけなかったから。だけどもし、秘めた渇望を狼とするならば、今の僕にとってそれは映画。次の作品が“狼”だね」

 そう話し、いたずらっぽく表情をゆるめた。地元横浜の老舗ホテルでカクテルを監修するほど酒に通じ、愛煙家でもある。幸せに感じる瞬間はと問うと、映画を撮っている時間と即答した。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン