ビジネス

鉄道会社「撮り鉄との共存共栄」を模索する新しい動きとは

昨年に実施された「お台場・有明&ゆりかもめ写真教室」の様子。右から2番目のカメラを手にしている男性が真島さん


 地元自治体で組織された真岡線SL運行協議会は、ファンとの共存共栄策として”マナーアップ写真教室”を開講。プロカメラマンを講師に迎えた”マナーアップ写真教室”は、沿線を撮り歩くという内容だ。

“マナーアップ写真教室”でのレクチャー内容には、列車の撮り方、どう撮ったら風景と列車がうまく一枚に納まるのか? といったテクニック論もあるが、線路内に侵入しないで撮る、業務を妨害しない撮り方といったマナー面にも及ぶ。協議会の担当者は、語る。

「鉄道ファンのマナーが悪いというフェイスブックの発信によって、真岡鉄道が”ファンを排除している”というイメージが流布してしまいましたが、それは本意ではありません。協議会内でも、マナーの悪い鉄道ファンは一部だと認識しております。真岡鉄道や沿線自治体にとって、ファンの多くは”お客様”なのです」

 真岡鉄道のSL運行は、地元住民や関係者の間でも大変な人気を博している。特に、SLが2両以上連結する重連運転は、なかなかお目にかかれない。重連運転は迫力満点のため、沿線住民でも大興奮する一コマだ。もちろん、重連運転時は鉄道ファンも多く押し寄せる。地元民も楽しみにしている一大イベントのため、SL運行を簡単に止めることはできない。

「そうした事情から、撮り鉄と共存共栄できる道を探りました。そこから生まれたのが、マナーアップ写真教室だったのです」(同)

 鉄道会社が写真教室を開講するケースは、真岡鉄道だけではない。ゆりかもめも昨年に”お台場・有明&ゆりかもめ写真教室”を開講した鉄道会社だ。

 東京・新橋駅-豊洲駅間の約14.7キロメートルを走るゆりかもめは、全線が高架線になっているを走る。踏切はない。また、フルスクリーンタイプと呼ばれる天井まで覆うホームドアが全駅に設置されている。だから、線路内に侵入することはできない。そのため、悪質な撮り鉄による列車妨害が起きることはない。

 真岡鉄道と異なる環境にあるゆりかもめが、写真教室を開講した背景にはゆりかもめが抱える特殊な事情がある。

 ゆりかもめは、1995年に開業した。当時の臨海副都心は、今のように商業施設は少なく、在住者もほとんどいなかった。沿線は無人の荒野が広がるだけだったのだ。

 20年の歳月が経過したことにより、台場や有明は開発が進んだ。ダイバー・シティやビッグサイトといった集客施設が林立し、そこに足を運ぶ来街者は増加。それに伴い、ゆりかもめの利用者も増加した。

 しかし、利用者が増加する中で、課題も浮上してきた。一般的な鉄道会社では、利用者の7~8割が定期利用者で占められている。対して、ゆりかもめの定期利用者は2~3割で、7~8割が定期外利用者だった。

 経営安定化のために定期利用者を増やすことは重要だが、それには沿線に企業や住宅を誘致しなければならない。それは、ゆりかもめという一鉄道会社の範囲を超えた話だ。

 そこで、ゆりかもめは定期外利用者が足を運びたくなる魅力ある沿線づくりに取り組むことになった。そのアイデアとして、写真コンテストが発案される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン