ゆりかもめ運輸部営業課の担当者は、こう説明する。
「ゆりかもめでは、2011年からカレンダーに使う写真を公募する”写真コンテスト”を開催しています。カレンダーの写真をコンテスト形式で公募したのは、利用者目線で沿線の魅力を発見することができると考えたからです。コンテストによって、利用者の愛着は強まったと実感しています。その一方で、長らくフォトコンテストを実施していると、応募するカメラマンが固定化し、作品も似たような構図になることに気づきました。新しい撮影者を発掘することで、さらに沿線の魅力が高まります。2017年に写真教室を開講した背景には、ゆりかもめの新しい魅力を発掘するという意図があったのです」
ゆりかもめが開講した写真教室では、台場在住歴21年のフォトグラファー・真島香さんが講師を務めた。真島さんは、鉄道写真を主に撮るカメラマンではない。そうしたところからも、風景が主・鉄道が従という写真教室のスタンスが窺える。
前述したように、ゆりかもめの線路内は人が立ち入れない。だから、写真教室で伝授されるマナーは、著作権や肖像権などがメインになっている。
写真教室を開講することで撮り鉄との共存共栄を模索する鉄道会社がある一方で、別の切り口で撮り鉄との共存を目指す鉄道会社も出てきた。
青森県・岩手県を走るIGRいわて銀河鉄道は、2017年10月から滝沢駅のホームに鉄道写真ブース「トレイン・スポッターズ」を開設。鉄道会社が直々に鉄道撮影スポット、いわゆる”お立ち台”を用意したのだ。
「トレイン・スポッターズ」は三方をフェンスで囲まれており、地面は滑り止め塗装も施されている。安全対策に抜かりはない。
鉄道ファンのみならず、一般の人でも思わずカメラを向けたくなるJR東日本が運行するクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」も滝沢駅を通過する。まさに、絶好の”お立ち台”と言えるだろう。
鉄道会社にしてみれば、撮り鉄をここに誘導することで安全運行が確保できるうえにファンの気持ちを満たすこともできる。IGRいわて銀河鉄道は、これまでの課題を両立させた。
鉄道会社が、お立ち台にお墨付きを与えるケースは珍しい。もちろん、鉄道会社公認のお立ち台だからと言って、どんな行為でも許されるわけではない。
「滝沢駅は盛岡への通勤圏ですし、周辺には大学・短大があります。そのため、朝夕は通勤・通学客で混雑します。そうした混雑時を避けていただければ、三脚の利用は可能です。ただ、安全上の配慮から脚立や自撮り棒の使用は禁止にしています」(IGRいわて銀河鉄道総務部広報担当)
また、駅舎に串焼き屋が営業しているので、駅には小さな駐車場が設けられている。ここは、あくまでも串焼き屋の駐車場として利用が想定されている。だから、撮り鉄が駅に車を乗りつけて駐車場を占拠することは控えるのがマナーだ。
鉄道会社側から撮り鉄との共存共栄を模索する新しい動きは出てきた。今後、鉄道会社と撮り鉄との共存共栄は深まるのか? それは、撮り鉄の振る舞いにかかっている。