作業は畑やプランターに数人から十数人が集まって行いますが、握力がない人には道具に滑り止めをつけて持ちやすくしたり、またプランターの高さを工夫して車いすの人でも作業できるようにしたりと、さまざまな工夫をします。作業の一部を体験するというのではなく、自分で育てる種を選び、蒔いて水をやり、植物を育てる過程に主体的にかかわることが大切なのです」

◆収穫して食べる、楽しむまでが重要なプログラム

 園芸療法は、花も野菜も果物も育てる。

「自分で蒔いた種が芽を出すと、もう放っておけないようです。普段、足腰が悪いと言って動かない人も、畑をどんどん歩いて様子を見に行き、水をやり、雑草を取ります。そしてもう1つ大切な工程が、収穫して食べること。

 育ててきたトマトが赤くなった! 採って食べてみようと、どんどん心が動きます。収穫して、みんなで料理して食卓を囲むときは至福です。園芸療法がほかのリハビリと比べてよいところは、この収穫の喜びの“共感”です。たとえば工芸品などを作る作業でも、それなりの満足感や達成感はあります。でも園芸療法で、大きく育ったおいもを土から掘り出したときの『わー、すごいね!』という喜びの共有と興奮は、想像以上に大きいのです。

 こうして随所で心が動く。心が動けば体が動く。外気浴や日光浴、歩行も能動的です。そして仲間と共感してほめ合い、自分の存在意義や自信を得られるのです」

 園芸療法は、アメリカでは1970年代頃から傷痍軍人の心の傷を癒す治療法として発展し、確立したという。

「日本でも精神科病院などで行われてきた歴史はありましたが、主に屋外作業が目的。心身機能の治療法としてもっと多くの人のケアに生かしたくて、アメリカで学び、ノウハウを持ち帰りました。

 帰国後、1995年に阪神・淡路大震災。被災者だけではなく、日本中が命や生きることを考えさせられました。折しも園芸ブームで、多くの園芸愛好家の心を動かし、人に活力を与える園芸療法への期待も高まりました。現在は病院、障害者施設、介護施設、地域の介護・認知症予防活動などで、園芸療法が行われています」

※女性セブン2018年2月15日号

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