国内

天皇陛下のおことば 陛下ご自身が吟味と推敲を重ねられる

サイパン島を訪れバンザイクリフで黙礼される両陛下(2005年6月28日) 共同通信社

〈私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。〉──これは、2016年8月8日、「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」の一部だ。では、「天皇陛下のおことば」はどのように仕上げられ、国民に伝えられるのか。『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社刊)を監修した神道学者の高森明勅氏が解説する。

 * * *
 天皇陛下の「おことば」については、一般に誤解が多いのではあるまいか。宮内庁の役人あたりが、ただ美辞麗句を並べた無難な作文をしているだけではないか、と。

 しかし、事実はまったく異なる。陛下ご自身が吟味と推敲を重ねて、自らのお気持ちを国民に正しく伝えられるよう精魂を込めて仕上げられたものだ。当意即妙のお答えの場合は、慎重なご配慮のうちにも、ますますそのお人柄が映し出される。
 
 もちろん、憲法上「国民統合の象徴」で「国民の総意に基く」とされる天皇の地位は重い。古代以来の歴史を背負ったお立場でもある。だから、人々が想像できないような制約のなかでのご発言だ。当然、抑制的で多方面への周到なお気づかいのうえに選ばれたご表現になるのは、避けられない。

 しかし、だからこそ国民に示される「おことば」には、陛下のお考えやご意思が誠実に、丁寧に凝縮されている。こちらがハッと胸を打たれるほど、率直にお心のうちを披瀝されているような時もある。平成28年8月8日のビデオメッセージはその典型例だろう。心を澄ませて珠玉の「おことば」に触れてほしい。

※SAPIO 2018年1・2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

三重県津市議会の青山昇武議長が女性市議への「不同意わいせつ」と「不同意性交等未遂」の疑いで書類送検された(左・Facebookより)
三重県津市議会の“禁断の話題” 公明党・青山昇武議長が女性市議への「不同意わいせつ」と「不同意性交等未遂」の疑いで書類送検、 調査委員会設置は棄権多数で否決
NEWSポストセブン
新橋には庶民に人気の居酒屋が数多くある(写真提供/イメージマート)
新橋の居酒屋が全国初「路上営業」で営業停止処分 人気店が摘発された背景と野外での”違法営業”が続く事情
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(時事通信フォト、写真は東京都港区の店舗)
【ネズミ混入味噌汁・被害者とのやり取り判明】すき家は「電話を受けた担当者からお詫び申し上げました」 本社も把握していたのに2ヶ月公表しなかった謎
NEWSポストセブン
水原の収監後の生活はどうなるのか(AFLO、右は収監予定のターミナル・アイランド連邦矯正施設のHPより)
《水原一平被告の収監まで秒読み》移送予定刑務所は「深刻な老朽化」、セキュリティレベルは“下から2番目”「人種ごとにボスがいて…」 “良い子”にしていれば刑期短縮も
NEWSポストセブン
歌舞伎町では多くの外国人観光客でにぎわう(撮影/木村圭司)
《全国初摘発》東京・歌舞伎町の「インバウンド向け風俗店」荒稼ぎの実態 客の6~7割は外国人で売り上げは11億円、店からは16か国の通貨を押収
週刊ポスト
眞子さんの箱根旅行のお姿。耳には目立つイヤリングも(2018年)
小室眞子さんの“ゆったりすぎるコート”に「マタニティコーデ」を指摘する声も…皇室ジャーナリスト「ご懐妊でも公表しない可能性」
NEWSポストセブン
ゼンショーホールディングスが運営する「すき家」が問題の画像についてコメントした(時事通信フォト)
【「味噌汁にネズミの死骸」で新展開】すき家がネズミ混入を認めて謝罪「従業員が提供前に商品状態の目視確認を怠った」 約2ヶ月にわたり非公表 昨年には大手製パン会社で混入の事例も
NEWSポストセブン
性被害により、バングラデシュの少女が8歳という幼さで亡くなった(地元メディアのFacebookより)
《バングラデシュ・少女殺害事件》「猿ぐつわをつけられ強制的に…」「義父の犯行を家族ぐるみで手助けした」 “性被害隠蔽殺人”も相次ぐ
NEWSポストセブン
原宿駅を降りてすぐに見える「竹下通り」(時事通信フォト)
《潜入レポート》原宿・竹下通りの偽ブランド品販売店にキャッチ男性に誘われ入店 「売っているのは本物?偽物でしょう」と聞くと…キャッチ男性がとった行動
NEWSポストセブン
3月1日に亡くなったフリーアナウンサーのみのもんたさん
《みのもんたさんは焼き肉で…》“誤飲”の恐ろしさ「窒息事故発生件数が多い食品」と「事故が起きた場合に重症となる割合が高い食品」、まったく異なるそれぞれのトップ3
女性セブン
サインと写真撮影に応じ“神対応”のロバーツ監督
ドジャース・ロバーツ監督が訪れた六本木・超高級和食店での“神対応” 全員のサインと写真撮影に応じ、間違えてファンの車に乗ってしまう一幕も
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”女子ゴルフ選手を待ち受ける「罰金地獄」…「4人目」への波及も噂され周囲がハラハラ
週刊ポスト