「着物を着慣れない子どもたちが袴をはいてくると、檀上で卒業証書をもらうにも動きにくかったり、一人でトイレに行ったりするのも大変。過去には帯がキツすぎて気分の悪くなる子どもが続出したこともあった」(千葉県内の公立小学校元校長)

 だが、「もともと小学校は私服なので、卒業式もどんな服装で行かせるかは個人の自由なはず。子どもの記念の日に着飾らせて何が悪いの?」と訴える親も多く、学校として禁止までするのはなかなか難しい、と前出の元校長は打ち明ける。

 着付け師の資格も持つ社会保険労務士の稲毛由佳さんは、こんな見解を示す。

「子どものときから着物を着る機会が増えることは個人的にはうれしいです。ただ、華美にエスカレートし過ぎだと思います。少子化の影響で子どもにお金をかけやすくなったこともありますし、周りの子どもがみな袴で出席すると聞けば、ウチだけブレザーやワンピースというわけにはいかないのでしょう。

 もちろん洋服を新調するにもお金はかかりますが、1回限りのレンタル支出で何も残らない袴に比べれば、ほかの機会で着られる頻度もまだありますし、お下がりなどで節約もできます。中学校に入ればいろいろな準備でお金もかかるわけですしね」

 また、稲毛さんは「服が本来の式典の目的を食ってしまっているのが問題」と指摘し、こう続ける。

「いまは七五三でも、子どもの成長を祝いお参りするといったことよりも、成長の記録を残す写真撮影のほうがメインになっています。小学校の卒業式もそれと同じで、6年間頑張ってきたことのお祝いや先生や学校に対する感謝など、本来の卒業式の意味がどんどん失われていき、親が子どもに何を着せるかばかりに気がいってしまうのは本末転倒です。

 しかも、子どもの意志とは別に高額な袴を着せて、親の“インスタ映え競争”が激化している現状をみると、学校側が行き過ぎた袴スタイルに一定のルールやブレーキをかけるのは仕方がないことなのかもしれません。卒業式といえども『小学生に相応しい格好で、華美な服装は避ける』という、いわゆる“平服”のドレスコードに立ち返るべきだと思います」(稲毛さん)

“アルマーニ制服”の小学校校長は「服育」という言葉で採用理由を語ったというが、卒業式の袴スタイルも本当に身の丈に合った服育やドレスコードに当てはまるのか。考え直してみる必要はありそうだ。

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