冬に旬を迎える魚「きんき」。一般には「きんき」の名称で親しまれているが、正式名称は「きちじ」。もともとは宮城県発祥の呼称で、黄みがかった血のような体色に魚名語尾の「じ」がついて「黄血魚」と呼ばれるようになった。「きんき」は北海道発祥の呼び名で、“黄金色で輝かしいばかりに美しい魚”を意味する。
きんきは、赤ものの魚の中ではもっとも美味とされ、春の産卵に向けて栄養を蓄える冬に旬を迎える。漁獲量が豊富だった昔は下魚(げざかな)扱いだったが、近年では高級魚として珍重されている。ちなみに、魚体の色が赤く、体形が似ていて目が大きいことなどから「金目鯛」と混同されることがあるが、まったく別種の魚である。きんきには背びれの後部に大きな黒斑があるのが目印だ。
きんきは、魚の中でも生活習慣病の予防効果があるとされる不飽和脂肪酸の比率が高い。また、骨や歯を健康に保つビタミンDや、赤血球の生成に働くビタミンB12も含む。魚体の赤色が表す通り、抗酸化作用のあるアスタキサンチンも豊富で、発がん予防の働きも期待できる。
家庭料理研究家の松田美智子さんは「きんき」についてこう話す。
「鮮やかな赤色が、それだけでおめでたい魚です。お祝いごとや、大事なお客様のある日など、ちょっと奮発したい時に体長20~25cmのきんきでしたら、堂々とした仕上がりになります。丸のまま買って自分でさばきましょう。鱗さえていねいに除けば骨も少ないですし、ちょっとかっこいいですよ」
【きんきの準備】
きんきは鮮度がよいものほど赤色が鮮やかで美しい。時間が経つとオレンジ色に変色していく。体を触ってみて弾力があって硬いもの、エラブタを持ち上げてみて、エラの色が鮮やかな血の色をしているものを選ぶ。
さばき方は、まず、鱗引きや包丁を使って尾から背に向かって鱗を落とす。かなりしっかりした鱗なので、取り残しがないようにしっかりと指で確認しながら作業を。
次にお腹から肛門まで包丁で切り込みを入れて、内臓を取り除く。流水で腹の中をていねいに洗い流す。
■『きんきの煮魚』の作り方
【1】きんき1尾は【準備】を参照して鱗と内臓を除く。肝は捨てずに取っておく。頭を左にした上面に下包丁を入れる。
【2】ソテーパン(深さ8cmぐらい)に水1カップと薄切りにしたしょうが1片を煮立てる。頭を左にしてきんきを入れ、酒0.5カップ、三温糖大さじ2.5を加えて紙蓋をし、強火で10分煮る。途中で肝を加える。
【3】味をみてしょうゆ大さじ3を加えて火を弱め、キッチンペーパーで落とし蓋をしてさらに5分、つねにボコボコと煮汁が魚を覆うぐらいの火加減で煮る。器に盛って煮汁をたっぷりかける。
撮影/鍋島徳恭
※女性セブン2018年3月1日号