「腎デナベーション」について医師が解説
日本人の高血圧患者は、約4300万人と推計されている。標準的治療として様々なタイプの薬剤が開発されているが、中には薬の効果が出にくい薬剤抵抗性のある人や定期的に薬剤の服用ができない人などもいる。その薬物治療が難しい患者に対する新しい治療として開発されたのが腎デナベーションだ。大腿部からカテーテルを挿入し、腎動脈に並走する交感神経を動脈の内側から部分的に焼灼して遮断することで血圧の上昇を抑える。
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門の苅尾七臣教授に話を聞いた。
「以前から臨床では腎臓の手術で血管を焼灼すると血圧が下がる現象が知られていました。その後、腎デナベーションが開発されて効果を検証するため内服薬群との比較試験が2009年に行なわれ、結果が報告されました」
腎臓の交感神経と血圧は強い関連がある。脳から腎臓へ伝わる交感神経の活動が活発になると腎臓でレニンというホルモンの分泌が促進され、血圧上昇を促進する生理活性物質アンジオテンシンIIが増加して血圧が上がる。この他にも尿細管でのナトリウムの再吸収が起こり血圧が上がる。
一方で、腎臓から脳へのサインもある。腎臓への血流が減少すると腎臓から脳に向け交感神経の信号が送られる。血流を増加するために交感神経が亢進し、心拍数や血管の収縮が起こり血圧が上昇する。
腎デナベーションは、日本メドトロニックとテルモ、大塚グループのJIMROの3社が実用化に向けた臨床試験を行なっている。メドトロニックとテルモは高周波を用いて焼灼するのに対し、JIMROは超音波を使っている。