パワハラ報道を耳にして、「ああ、まだそんなことを続けているんだ」と女子レスリングの元日本代表で、現在はまったくの異分野で活躍する30代女性はいう。
「栄監督は、一階級につきコレと決めたひとりだけしか目をかけない。それ以外の選手には、とにかくクソミソに言うんですよ。人間性を否定するようなことまで言う。しかも、それがしつこい。初めて言われたときには『なんでこの人にここまで言われなきゃいけないの?』と思いました。自分の所属の選手を露骨に優先することもあるけれど、いったん見放すと自分のところの選手には、とりわけ容赦がなかった。『まだレスリングやってるんだ』『辞めないの?』とか、必死で練習している人に言うんですよ。しかも何回も。馨さんが拠点を東京に移したら、代表合宿で『よく俺の前でレスリング出来るな』って言われたそうですね。所属を離れたタイミングだし、本当に言ったんだろうなと思います。でも深く考えないで言葉を出しているし、何人もの選手に同じようなことをしょっちゅう言っているから、たぶん本人は覚えてないでしょうね」
その一方で、相性がよいタイプの選手とはうまくやっていけるし、強くしてもらえるから感謝されるのだと続けた。
「沙保里さんのように明るくて、目上の人に甘えるのが上手で、感情表現がわかりやすい人とは相性がいい。リオ五輪のとき、沙保里さんと栄監督だけがビジネスクラスで移動したことを告発状は批判しているみたいですけど、馨さんは気にしてないんじゃないかな。五輪選手の移動っていつも基本的にエコノミーですから。それに、あのときは腰をケガした沙保里さんが自腹でアップグレードして、一人だけの移動は不安だからと後輩の登坂絵莉と監督を連れていったと聞きました。一人だけ勝手なことをして和を乱しているじゃないかと思うかもしれないけど、事前に協会の偉い人とか他の選手に沙保里さんがうまく話したのでしょう。そういうところ、上手な人だから」(前出の元代表)
逆に伊調馨の場合は、言葉を尽くして説明するよりも、黙って動き続けることで理解してもらおうとするようなところがあるという。
「そのやり方は馨さんらしくてかっこいいけど、同じように物事を考えて行動する人にしか、伝わらないんですよね」(前同)
職場のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを被害者が訴えても、加害者側は「そんなつもりだったことは一度もない」と言うのが常だ。今回のパワハラ問題についても、おそらく誰も”嘘はついていない”のだろう。だが、個々人が嘘をついていないことと、問題があるか否かは別の問題だ。第三者委員会などによって、事実が明らかになる日はくるのだろうか。