そして意外なところに「俳優」として出てきた二世が、紘毅であった。先日公開された映画『バケツと僕!』。児童養護施設に就職した気弱な神島(紘毅)が、母から虐待され捨てられた軽度の知的障害があるバケツ(徳永ゆうき)と繰り広げる人間ドラマである。ゴミだらけの部屋にいるバケツを一生懸命面倒みる神島だが、肝心のバケツは盗癖があり、好き勝手に動き回って神島を振り回す。興味深いのは、神島がバケツを支えるという単純な構造ではなく、どっちもダメでどっちもちょっと前向きで、関係性がフラットになっていること。
その分、神島には繊細な演技が要求されるが、紘毅には父・前川清譲りのへなっとした笑顔という武器があった。うれしいときも情けないときも、この笑顔。体当たりとか強烈とかとは違う紘毅にしか出せないもの柔らかい空気を出すと、主役なのに脇役みたいになっちゃう。これもまた個性か。
自分の立ち位置が確立した二世たちは強い。名優の二世と言われつつ、独自の境地にたどりついた田村正和も船越英一郎も歩んできたこの道。バラエティーで暴露トークしている二世のうち、何人が「本物」になっていくか。なんとなくわかりますけどね…。