そういった助手としての経験と、トレーナーとしての月日を積み重ねて、馬づくりに大切な4つの条件にたどり着きました。
リズム、タイミング、バランス、そしてハート。この4つを極めればトップアシスタントになれます。海外トレーナーが教えてくれた「リズム」と「ハート」の間に、独自に2つの要素を入れました。
4つの並びは習得容易な順番。リズム変換はプロならばやってもらわなければ困る。タイミングもリズム変換に付随するもので、どこでためてどこで抜くか。バランスとは、肉体的にいえば、身体のバランスのことで特に体幹がしっかりしていること。人間のバランスは馬に伝わり、馬は人間の身体の傾きに合わせてバランスを保とうとします。精神的なバランスとしては、物事の全体像と自分のポジションを把握できることが必要です。
やはり一番難しいのがハート。自分の仕事への熱い姿勢です。モチベーションが高ければ、日々の細かい行動の質も変わってきます。
つまり、いいライダーをつくることも調教師の重要な仕事になる。
実はこの4つの奥義は、馬づくりに限ったことではありません。人間関係のほとんども、この4つに集約されるような気がします。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。2021年2月で引退することを発表している。
※週刊ポスト2018年3月16日号