例えば北海道に「十勝若牛」というブランド牛がいる。特徴は「やわらかさとクセのない肉質」。この特徴は従来の「A~C」「5~1」では測ることができない。そこで帯広畜産大学らが取り組む「やわらかさ」を画像診断で可視化する、新しい評価基準を認定基準とすることにしたという。
そのほかの地方でも新たな取組が行われている。例えば鳥取県では脂肪の口溶けに注目し、「オレイン酸含有率が55%以上で肉質等級3等級以上」を「鳥取和牛オレイン55」として認定。「脂肪交雑」という視点であっても、量だけでなく質の面からもアプローチしている。
だが、国としての具体策の形はいまだに見えない。1988年に脂肪交雑重視の新基準は「脂肪が多いほど高値で売れる」という偏った格付けインフレを生み出した。当時と現在の和牛を比べると、同じ等級なら脂肪量は倍ほどにもなったという調査結果もあるが、そこに味への評価は介在しない。
農水省は農林水産物・食品の輸出額の目標を2019(平成31年)には1兆円と設定しているが、食肉関係者から漏れ聞こえてくる「和牛は昔のほうがうまかった」という声をどう聞くのか──。
「食」のブランド価値は「味」を抜きに語ることはできない。海外でも闘える強固なブランドを構築するには、量の確保以前に質の担保が絶対条件。海外にも名牛はあまたある。「和牛」に限定しても、格付け基準の見直しや血統や交配、肥育方法などの研究体制強化などの“急所”はいくらでもある。