ライフ

なぜ「和牛は昔のほうがうまかった」と言われてしまうのか

肉質等級はサシの入り方で決まる(写真:アフロ)

 肉に等級があることは広く知られているが、必ずしもそれがうまさと直結するわけではない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
「A-5=最高においしい肉」という誤解がある──。日本の格付制度においては可食部の多さによってA~Cの3段階からなる「歩留り等級」でも、脂肪交雑を基準に5~1からなる「肉質等級」においても「A-5」が最高ランクとされている。実際に芝浦などの食肉市場でも、「A-5」が最高級として扱われ、高値がつく。

 だが「歩留まり等級」は可食部の比率で、肉質等級はサシの入り方。「味」自体の等級を区別する基準は存在しない。そもそも食味自体、非常に複雑なメカニズムで、肉の「味」や「香り」にまつわる研究は、各研究機関で行われ続けている。考えてみれば格付が現在の規格へと移行した1988年当時──いまから30年前に味を判別する基準を作れるはずがない。

 乱暴に言えば、和牛は細かいサシ(小ザシ)の入り方で価値が決まる。和牛の98%は黒毛和種。「A-5」となれば「間違いなく黒毛」(市場関係者)という見方が一般的だ。

 ただし気になることがある。近年「おいしいとは言いがたい和牛がある」(精肉店店主)というのだ。前述したように、現在の食肉の格付け制度には外見上の基準しかない。それゆえ生産者は「見かけ」を調えることに力を注ぐようになる。その結果、肉の食味にバラつきが出てしまうというのだ。

 特上品や上品は、仲卸などのプロの目利きが選定して高級店へと納入されていく。当然ながら、並品は一般消費者に向けて流通する。一般向けに流通する和牛に食味の悪い肉が混ざれば、消費者は和牛から離れてしまう。肉質の底上げは、日常の食卓に直結する一大事なのだ。

 実は国にも畜産に対する危機感はある。2015年7月には国による「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」が策定された。農水省も「牛肉の格付けの仕組みについて」のなかで「脂肪交雑以外の価値を実需者・消費者にどう訴求していくかが課題」としている。

 具体策にも踏み込んでいて「従来のサシ中心の格付に加え、食味や成分による牛肉の評価手法を開発」と評価手法に触れ、「成分(脂肪酸、アミノ酸など)、物性(かたさ、水分含有量など)」といった評価基準を挙げている。

関連記事

トピックス

神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン