北国の冬は雪深く寒い。外食に出かけるより、カップラーメンなどの保存のきく温かい汁物が重宝される。
北国の食の特徴に「塩辛さ」がある。人間の体は塩分を摂取することで寒さに対して体温を維持できる仕組みになっているからだ。ただし、一方で多量の塩分の摂取習慣は高血圧につながると言われる。
ある調査では1950年代の青森は1日に28グラムという大量の塩分を摂取していたという。現代(2016年県民・健康栄養調査)ではその摂取量は10.5グラムと半分以下になったが、それでも全国的に見れば塩分摂取量は多い。
昭和の頃、青森には「あだりまき」という言葉があった。「あだり」とは急に意識を失って倒れること、「まき」とは血筋を指す。つまり「あだりまき」とは急に意識を失うような倒れ方をする血筋──高血圧は遺伝によるものだと考えられていたが、実のところ寒さが血管を収縮させて血圧を上昇させるなど、東北には塩分以外にも血圧が上がる要因はいくつもあったのだ。
寒冷な北国では塩分を摂取することで寒さに対抗してきた。冷蔵技術が発達する以前は、野菜を中心に収穫した食料を塩蔵して保存することは文字通り、生きる「糧」だった。食習慣や味覚は地域の気候や風土時間をかけてゆっくりと変化していく。寒い地域で、温かく塩気のある汁物が好まれるのには、やはり理由がある。そして北国にも春がやってくる。