1982年入省組でも、安倍首相は次官候補だった福田淳一・現次官がまだ主計局長時代に、同期の山口県出身のお気に入り官僚、迫田英典氏を格上の国税庁長官に起用する逆転人事を行なった。当然、財務省では同期の結束が崩れ、出世のために官邸になびくようになっていく。
出世競争に出遅れた佐川氏が、「国税庁長官になれるかもしれない」と夢を抱いたとき、すでに官邸の術中に落ちていた。
財務省の文書改竄問題が発覚すると、新聞テレビはこの内閣人事局が忖度政治の元凶だという論陣を張っている。その背後には、国民の“忖度批判”を利用して、昔のように人事権を官僚の手に取り戻そうという財務省、霞が関の思惑がある。
そもそも選挙で選ばれた政治家が官僚の人事権を持つのは当然の仕組みで、内閣人事局ができたから役人が総理の意向を忖度して文書偽造事件を招いたというのは本末転倒、財務官僚の責任転嫁の論理だ。
※週刊ポスト2018年4月6日号