前川喜平・前文部科学事務次官が行った名古屋市の公立中学校での公開授業に対し、文科省を通じてその経緯などを照会をしたことが問題視されている自民党の赤池誠章参院議員。同氏が過去に、文科省と東宝がタイアップした映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』(2015年公開)のキャッチフレーズ「友達に国境はな~い!」についても、文科省に抗議していたこともニュースとなった。同氏は文科省が「『国境はない』という嘘を教え、誤認をさせてはいけない」と意見するとともに、「国境は歴然としてあります」と主張したのだ。
この赤池議員の言動について、キャッチフレーズの専門家であるプロのコピーライターはどう見るのか。コピーライター歴10年以上の香国ゆきさん(仮名)が見解を述べる。
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コピーライター目線で見ると、「〇〇に、国境はない」という使い古されたフレーズを使った“超”がつくほど無難なキャッチフレーズに対して「工夫が足りない」と言う人はいたとしても、目くじらを立てる人がいるのは驚きだった。
そもそもキャッチフレーズとは、その名のごとく「キャッチ=ターゲットの心をつかまえる、印象に残る」ことが目的だ。ある事象をそのまま言葉にしたものではない。ここで例として、誰もが知る秀逸な企業キャッチフレーズ(この場合、コーポレートスローガン等とも言う)の例をいくつか見てみよう。
【NO MUSIC NO LIFE】(タワーレコード)
直訳すると音楽なくして人生なし、と言った意味だが、実際には音楽が無くても人生は送れる。つまり、「音楽の無い人生なんて、味気なさすぎてつまらないよね。音楽のある生活を送ろうよ」というメッセージが込められているのだろう。
【ココロも満タンに】(コスモ石油)
言うまでもなく、心にはタンクなどない。「単に車やバイクをガソリンで満タンにするだけでなく、心も満たす存在になりたい」という思いが込められていると想定できる。
【お口の恋人】(ロッテ)
実際に、口に恋人なんて存在しないし、そもそも甘いお菓子が嫌いな人だっている。「ロッテのお菓子が人々にとって恋人のような存在であってほしい。世界中の人々から愛される会社でありたい」という願いが込められていると思われる。