以上のように、キャッチフレーズには「“〇〇”のようでありたい」という企業の願いや思いが込められており、額面通りの意味以上のメッセージを含ませていることが多い。以前、「日清カップヌードル」でも「NO BORDER」というキャッチフレーズを使ったCMの名シリーズがあった。
公式HPには“「おいしさを感じる気持ちに垣根がないように、人々の心にも垣根がなければいいのに」という願いを込めて表現した”との説明があるとおり、「現実には国境というものはあるけれど」という前提があるからこそ、成り立つ表現だ。
先の「友達に国境はな~い!」も、「(現実には国境というものはあるけれど、)友情は国境の有無に関係なく素晴らしいものだよね」という意味と取れる。つまり、この言葉はむしろ“国境がある”という前提を認めているからこそ成り立っているのであり、「『国境はない』という嘘を教え、誤認をさせてはいけない」と言う赤池議員の方が“誤認”していると言わざるを得ない。そして言うまでもなく、このキャッチフレーズは国境うんぬん、コスモポリタンかどうか等を説明するものではなく、異国の者同士の友情を語るために、たまたま“国境”という言葉が使用されたというだけである。
赤池議員は「私なら『国境があっても、友達でいよう』と名付けたいところです」と言っているが、キャッチフレーズとは、宣伝したい対象物の魅力や特徴に沿ったものである必要があるのだ。この映画は「“国境”の存在により苦労した異国の者同士の友情物語」でもなんでもないので、残念ながら全く成り立たない。それでも赤池議員がキャッチフレーズを額面通りの真実かどうかでジャッジするというのなら、ぜひ自身が属する自民党の「責任を果たす。 政治は国民のもの 自民党」というキャッチフレーズに対しても嘘が無いかどうか、厳しい目で検証してみてほしいところだ。