ビジネス

しまむらが伸び悩む4つの理由 ユニクロ型への転換には疑問も

再び「しまらー」ブームを巻き起こすことができるか

 若い女性たちが安価な服を買いあさり、全身コーディネートを楽しむ“しまらー”ブームが起きたのは2009年。堅調な業績を上げてきた衣料品大手しまむらだが、ここにきて苦戦を強いられている。いったい何が原因なのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏がレポートする。

 * * *
「ファッションセンターしまむら」を中核とする、しまむらが4月2日に発表した2018年2月期の連結決算は、売上高5651億200万円(前期比0.1%減)、営業利益428億9600万円(同12.1%減)、経常利益439億2000万円(同12.3%減)、当期利益297億1700万円(同9.6%減)と微減収大幅減益に終わった。

 大幅減益といっても、不振企業の多いアパレル業界においては十分に好成績だが、長らく業容を拡大させてきた経営陣からすると、不満が残る業績だっただろう。業績が伸び悩み・停滞している理由については、さまざまな要因が考えられるが、ここでいくつか挙げてみたいと思う。

 まず、第1に「ファッションセンターしまむら」として成長できる要素がほぼなくなってしまったというところである。

 ファッションセンターしまむらの店舗数は2018年2月で1401店舗もある。「ユニクロ」が800店舗台でとどまっていることと合わせて考えればいかに店舗数が多いかわかるだろう。

 これまで、しまむらは郊外のロードサイドを選んで出店してきたが、1400店舗もあれば出店していない郊外はほぼなくなってしまった。同社は今後グループ全体で3000店舗を目標に掲げているが、もう残る場所は大都市都心しかない。

 しかし、しまむらグループのあの雑然とした店作り・店構え・陳列で都心の客が満足するとは到底思えない。それこそアパレルは「物」だけではなく、「見せ方」も売れ行きを大きく左右する。

 また、これまでのローコストオペレーションの徹底ぶりからすると、しまむらが家賃の高い大都市都心に出店してこれまで通り利益を上げることは難しいのではないかと思う。特に大都市都心は年々最低賃金が上昇しており、人件費という面でもしまむらのローコストオペレーションでは通用しないだろう。

 次に、ビジネスモデルの変換期に突入していることが挙げられる。知られているようにこれまで、しまむらは各メーカーの不良在庫を格安で仕入れてきて低価格で販売して好評を博してきた。

 不良在庫品なので追加補充は効かずに「売り切れ御免」の形となったが、かえってそれが、客の消費意欲を煽って好調に消化できていた。何十万枚・何百万枚と作ることでコストダウンをしたものの、あちこちで同じ商品を着ている人を見かける“ユニ被り現象”を引き起こしたユニクロとは対照的なやり方だった。

 しかし、しまむらはついに自社オリジナルブランド「CLOSSHI(クロッシー)」を開始しており、この比率を40%まで引き上げることを発表している。2016年秋から発売して好調だったレディースの保温ズボン「裏地あったかパンツ」は100万枚を販売したというが、これはビジネスモデルをユニクロ型へ変更していることを意味する。

 自社ブランド比率40%もさることながら、100万枚を売るということはメーカーの不良在庫では到底賄うことができず、これは自社で独自に企画生産したものだと考えられる。100万枚を作ってコストダウンするというユニクロ型のビジネスモデルにすでに突入しているのだ。これまでの自社の強みを捨てて別のビジネスモデルを構築するのだから、その変換期には停滞して当たり前である。逆にこの転換が上手く行くのかどうか甚だ疑問でもある。

関連キーワード

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン