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「学歴フィルター」を導入する超人気企業採用担当者の言い分

学歴フィルターはなぜ導入されているのか

 就職氷河期が終わるころ、インターネットを中心に使われた「学歴フィルター」という言葉は、今では一般にも広く知られる言葉となった。就職活動において採用側があらかじめ一定のレベル以上の大学在籍を基準にすることを指すこの言葉は、あるナビサイトが炎上したことで再び注目を浴びている。ライターの森鷹久氏が、こっそり導入されている学歴フィルターについて企業の採用担当者に聞いた。

 * * *
「正直、学歴で差別されたなと思います。残念です」

 千葉県下の私立大学に通うM君(21)が、うつむきざまに寂しそうに訴える。先日、とある企業が開催する「企業説明会」へのエントリーを巡って、ネット上がざわついた。企業の採用試験は最近、そのほとんどをネットでまず選抜することが当たり前となっているが、学生の学歴によって「企業説明会へのエントリー」すらできない、という事態が発覚したのである。

「早稲田や慶應、上位国立大、GMARCHと言われる超有名私大くらいまで。その他の大学、例えば僕の通うE大学のプロフィールでは確かに”空きがない”と表示された。門前払いどころか、その門をたたくことすら許されないということか」(M君)

 某企業が就職サイトを通じて行った「企業説明会」の募集ページ。E大学在学中、というプロフィールのM君のアカウントで募集ページを確認したところ、全日程ですべて「満席」となるが、M大学に通う知人のアカウントから確認すると、すべての日程で「空席」が確認された。これが「学歴差別」に当たるのではないか、ひどい企業だ、ということで”炎上”したのだ。だが昨今は、求人率が一倍を超え、空前の売り手ブームともいわれている。いったい何が起きているのか? 別の飲食系企業の採用担当者が説明する。

「若者だけでなく人手不足が慢性化している中、どの企業も人集めに必死です。人手が足りずに事業の縮小や店舗の閉鎖を余儀なくされる企業まで出るほど。売り手有利の中、一流企業や人気企業ばかりに人や学生が集まり、飲食や製造業といった世界は目立たない。給料が僅かばかり安かったり、ネットで少しでも”ブラック”などと書き込まれたら、それを真に受けるのか本当に人がパタッと来なくなる。事態は深刻です」(飲食系企業採用担当者)

 一方で”人が殺到している”という人気企業ではどうなのか? 新興のネットインフラ系企業採用担当・坂本和美さん(仮名)は、まさに「うれしい悲鳴」を上げている真っ最中だ。

「企業説明会の案内を出せば即日満席、といったレベル。十数倍だった採用倍率は、百倍、二百倍を超えてどこまで行くのか? という感じで、まさにこちらは選び放題。東大京大など、超高学歴の学生から順に人柄を見ていく、といった風に”足切り”的な採用体制になっているのが現実です」

 坂本さんの会社では、学生をいわゆる「ふるい」にかける事で、採用の効率化を図っているのだという。例えば、炎上した企業のように、ある程度のレベル以下の大学に通う学生は、そもそも企業説明会に参加できないシステムを取っている。やはり「学歴は一番の指標」(坂本さん)と断言するように、人柄も仕事ができるかも、やはり学歴があって輝くもの。昨今のように人が殺到するといった状況で、誰も彼も説明会に参加させていてはらちが明かない。というのだが、この「ふるい」のシステムは、就職活動サイトの担当者から提案され、導入を決めたものだ。

「人が集まりやすい企業では、同じようなシステムを取り入れているところは多い。人気があって人事担当者が少ない企業にとっては本当に便利なシステム」(坂本さん)

 超売り手市場だからこそ、人が集まる人気企業にはより良い人が集まり、不人気企業は見向きもされない。そういった両極化が浮き彫りになってきているようだが、ふるい落とされた学生からしてみれば、たまったものではない。まさに学歴のみで「モノ」のような扱いを受けているということに不満を覚える学生は少なくない。

「せめて説明会くらい行かせてくれと……。一次試験を受けて”お祈り”(不採用通知)であれば納得できるが……」(M君)

 企業側にもM君のような学生からの「訴え」が届くこともあるというが、いちいち対応していては採用業務が進まない。

「以前は大卒か否か、でしたが、今は少子化に加え全入学時代と言われるほど、みんなが大学に行きます。レベルの低い大学も増え、大卒かどうかというよりも、どの大学か? で見るほうが早いことは明らかだから、採用説明会の段階から”足切り”をできれば効率が良いのです。人が足りないからこそ、いかにして優秀な人材を確保するかが我々の仕事。学生さんの知らないところで”選別ができる”というのはありがたかったですが、ここまで騒動が大きくなってしまうと……ほかの手段を考えざるを得ません。今では、逆に低レベルの大学よりも、実業系高校を優秀な成績で卒業した高卒者に注目している企業もある」(坂本さん)

 大学全入学時代、そして少子化。もちろん「出身大学」によって社員を選別することは合法的な行為ではあるものの「××大学はダメ」「△△大学出身者はレベルが低い」などとは表立って言えない。だからこそ、こうした「学歴フィルター」を用いることで、効率的な選別作業を行うわけだが、やはりそれがバレてしまうと、世間からの風当たりは強い。こうして「こっそり」仕掛けられたふるいは、学歴だけでなく、家柄、出身地にも及ぶことも考えられる。選別を通じて、あらゆる場面で”格差”を目の当たりにしていかなければならないのだろうか。

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