西武HDの本社は所沢から池袋に移転予定
振り返ると、西武グループが経営危機に陥ったのは2004年、西武鉄道の有価証券虚偽記載事件だった。同事件で西武鉄道は上場廃止となり、再上場を果たしたのは10年後の2014年4月。長くなるのでその間の苦闘は割愛するが、再上場を果たす半年前の2013年9月、西武HDに追い風が吹いた。2020年の東京五輪招致決定がそれだ。
同社はほかの鉄道会社と違い、プリンスホテルという大きなホテルチェーンを傘下に持っている。五輪期待もあって目下、訪日外国人の数が大きく伸びており、ホテル業界は活況を呈している。当然、プリンスホテルの業績も好調だ。
もう1つ、西武グループがほかの鉄道会社と違うのは、グループの原点が鉄道でなく、不動産開発の箱根土地という企業にあったこと。この箱根土地が後年、国土計画、さらにコクドと社名を変え、非上場のコクドがグループを支配し、子会社の西武鉄道が上場という形を取っていた。
ともあれ、ホテルと並んで不動産事業も西武グループを語るうえで不可欠なものだ。たとえば、旧赤坂プリンスホテル跡地に建てた東京ガーデンテラス紀尾井町(2016年7月開業)という高層ビル。
ビル上層階には、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町というグループのホテルも入っているが、ホテル専業だった旧赤坂プリンスホテル時代とは異なり、もう1つの軸はオフィスの賃貸である。そして同ビルのキーテナントにはヤフーが入居。一等地であることから賃料も高い水準で取れている。
こうした流れもあり、西武HDの業績も向上、今期(2019年3月期)は、関東、関西それぞれの私鉄の雄である、東京急行電鉄や阪急阪神ホールディングスの純利益(700億円から720億円程度の見込み)とはまだ差があるものの、この2社に次ぐ450億円程度と予想されている。
東急電鉄は目下、本拠地である渋谷の大再開発に取り組んでいるが、どの私鉄も人口減少で沿線人口の囲い込み競争が激しさを増しており、鉄道事業以外の、ホテルや不動産のビジネスがクローズアップされている。もちろん、東京五輪以降はホテルやオフィスビルの供給過剰懸念もあるのだが、本業である鉄道事業は基本、人口減少で先細るのは不可避だけに、不動産事業も重要な位置づけとなるのだ。