ダンスシーンの稽古場での様子(撮影:山崎力夫(C)Disney)
「異色の『ノートルダムの鐘』はこれまでの作品のファンには受け入れられないのではないかという指摘もあった中で、なんとか上演にこぎつけました。
日本の初演は2016年末ですが、不寛容や内向きの孤立主義が社会で叫ばれる時代だからこそ、この作品を届ける意味も増した。演劇を通じ、この時代に対する強烈なアンチテーゼのメッセージを投げかけています」(吉田氏)
主人公・カジモドと心の絆を結ぶヒロイン・エスメラルダ役を演じる岡村美南はこう話す。
「エスメラルダは地位や外見に惑わされず、真実を見抜ける精神性や道徳性があるからこそ人を惹きつける。演出家から繰り返し言われた『彼女はヒーローじゃない』という言葉が、演じるたびに腑に落ちます」
作品で描かれる人間や社会の光と闇。他者とどう向き合うべきか、考えさせられる名作だ。
●取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2018年4月27日号