国際情報

中国の監視社会 携帯盗んだ犯人がすぐ特定されてしまうほど

デバイスの進化が監視を強める結果に

 中国は監視社会といわれるが、その“精度”のほどはこんな些末な事件からも伺い知ることができる。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

  * * *
 いったい何を焦点に記事を書くべきか、迷ってしまう事件である。武漢市青山区で起きたスマートフォンの窃盗事件の顛末である。まずは、事件を報じた地元紙、『楚天都市報』(4月11日付)のタイトルからみてほしいのだが、それは、

〈携帯電話を盗んだ男が、盗まれた男の妻とデートの約束 現場に現れてところで逮捕〉

 というものだった。

 簡単にはシチュエーションが浮かんでこないのだが、要するに携帯を盗んでおいて、その被害者の妻とのデートの約束を取り付け、待ち合わせにのこのこ現れたところで御用となったという話だ。

 この泥棒がナンパの達人なのか、それとも被害者の妻というのが背徳夫人なのか、と思って記事に読み進めると、さにあらず。要するに、夫に何度電話してもつながらない妻が心配して連絡を取り続け、まんまと犯人を誘い出したという捕り物劇であった。

 当初、妻は夫に20数回も電話をかけたがずっとつながらない。うち、2回ほど誰かが応答したのだが、返事をしないまま通話は途切れたという。

 何か深刻な事件の巻き込まれたのでは。それを心配した妻が、夫の入り浸っているネットカフェに向かうと、夫は自分の携帯が盗まれたことも知らずに遊んでいたという。携帯電話は新しいものを買ったばかりで、暗証番号の設定をする前だった。

 ほどなくして犯人がウィチャットの設定をしたらしく妻が「友達」に入れられ、そこから巧妙に犯人を誘い出したというストーリーである。いわゆる「妻のお手柄」というやつだが、驚いたのは、警察の捜査能力である。

 通報を受けて間もなく、ネットカフェに残った映像を確認。顔認証システムに照合したらすぐに男の身元(張と名乗る40歳の洪湖人)が特定されたと記事にはある。要するに妻が呼び出さなくても犯人は間もなく捕まっていたことは間違いない。恐るべき監視社会の一端が垣間見えた事件である。

関連キーワード

トピックス

無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン