では、当事者のメーカーでは発泡酒市場をどう考えているのか。「淡麗」でガリバーシェアを誇る、キリンビールの布施孝之社長はこう語っている。
「発泡酒はウチが強いカテゴリーですから、発泡酒市場の動向、イコールキリンの動向みたいになっていますね。今年1~3月、ウチの発泡酒の販売実績も振るわず、前年比でマイナス6%の94%でした。
決して順調なカテゴリーとは言えないですけど、『淡麗』と『淡麗グリーンラベル』、『淡麗プラチナダブル』は、ビールにおける(キリンの)『ラガー』同様に、これしか飲まないというお客様、要はロイヤルユーザーが多いんです。
こうした方々は、酒税がどう変わろうとこれと決めているブランド以外は飲まない。ですから、そうした(発泡酒の)ロイヤルユーザー向けにマス広告をドーンと投資していくことは考えていません」
対して、前述したように家庭用市場の6割を占める第3のビール。こちらはサッポロビールがエンドウたんぱくを使用して、2004年に発売した「ドラフトワン」が先駆けだった。この市場も翌2005年、大豆たんぱくを使用したキリンの「のどごし生」が大ヒットし、市場を席捲して1位の座を固めている。
その後、第3のビールは麦系の商品が多数登場して戦国時代となったが、ずっと首位をキープしてきたキリンが昨年、ついにその座をアサヒに明け渡している。前出の布施氏は、全国の事業所を回った際のことをこう振り返っていた。
「昨年後半ぐらいから徹底的に対話集会を行い、『昨年もウチはシェアで他社に負けた。要するに、キリンビールはいま、負け戦の中にいるんだ』と話し、危機感や反省点を現場と共有してきました。『再成長に向けて全員が覚悟を決めてやらないといけない』と伝えたのです」
キリンは巻き返すべく、今年1月23日にアルコール度数7%の「のどごしSTRONG」を投入、続けて麦系の「本麒麟」を3月13日に発売。両商品ともに出足は好調で「のどごしSTRONG」はRTD支持層からの逆流入が起こり、麦系の「本麒麟」は豆系の「のどごし生」とは食い合うこともなく、棲み分けができているという。
また、キリンでは発泡酒や第3のビールに関して、低価格以外に消費者が求める要素として、「爽快なうまさ」「“飲んだ”という満足感」「ビールに近い味覚」の3つを挙げる。そのニーズに合わせた商品が順に、「のどごし生」、「のどごしSTRONG」「本麒麟」だというのだ。また、「のどごし生」自体も5月中旬製造品より順次リニューアル予定で、こうした“3本の矢”でライバルを突き放したい考え。
とはいえ、ビールが固定票だとすれば発泡酒や第3のビールは浮動票で、ニーズはその時々で移ろいやすい。