◆むしろ非高学歴層にねらいを
こうしてみると、「学歴フィルター」は少なくともその有効性が疑わしくなっている。
とはいえ、なかには高学歴でかつAIに代替されない能力も優れた、本物のエリートもいる。就職人気ランキングの上位にくるような超一流企業は、そうした本物のエリートを多数獲得している。しかし企業の人気度が下がるほど、そのような人材は少なくなる。それでも多くの企業は「学歴フィルター」を通して偏差値が高い大学の学生を採ろうとする。
しかし、そこに残っているのは、いわば「上澄み」をすくわれたあとの学歴エリートたちだということを見落としてはいけない。だとしたら大多数の企業にとっては、彼らの中から採用するより、「学歴フィルター」で門前払いにあった人材のなかから優秀な人材を採るほうが得策だということになる。
問題は、そうした人材をどうやって発掘し、育てるかである。すでに述べたとおり直感、感性、ひらめき、発想力といった能力はその性質上、直接身につけさせることも、評価させることも難しい。
唯一の方法は、実践をとおして自ら身につけるようサポートし、仕事の成果やプロセスをとおして能力を見極めることである。インターンシップがそのための有効なツールになることは間違いない。
もっとも、これまでわが国で行われてきたものより質・量ともに充実させなければならない。
ちなみに私が顧問を務める人材育成の会社では、非高学歴者がAI時代に勝ち残れる能力を備えた「ネコ型人材」(※注/自由奔放で自発的に行動できる人。太田氏が命名)に育つためのインターンシップ・プログラムの開発に挑戦している。かりに成功すれば、旧態依然とした学歴主義に小さいながらも風穴を開けられるのではないかと期待している。
大学の偏差値と仕事能力のギャップは開く一方である。にもかかわらず大学入試という選別システムにいつまでも企業が寄りすがっているのは、なんとも情けない話だ。そろそろ学歴にとらわれない採用に本腰を入れてもよいのではないか。