では売り時の2番目、「その方の人生での売り時」について考えたい。
市場が盛り上がっていようが下落基調にあろうが、所有しているマンションを売らなければいけない時はある。もっとも差し迫っているのは、何らかの理由で現金が必要な場合だ。あるいは住宅ローンが払えなくなった時。
そういう時にはグズグズしないで売却手続きを進めるべきだろう。見ている限り、競売に追い込まれるよりも任意売却のほうが、痛みは小さいように思える。また、自身の健康上の理由でそのマンションに住めなくなった時も、売却への潮時だ。その向こうに待っているのは相続である場合が多い。
自分のマンションを受け継いでくれる相続人がいる場合、考えて欲しいことがある。相続人がそのマンションを受け取って、喜ぶのか、それとも困るのか、という現実的な問題だ。自分は気に入って住んでいても、相続者は同じかどうか。
この場合、目安はそのマンションに資産価値はあるか。あるいは換金性はあるのかということだ。今や遠隔郊外や地方のマンションは、売却さえ難しい物件がある。そういうマンションを残されても、相続人は困るだけ。であれば、自分が生きているうちに現金化して、相続人に残すことを考えるべきだろう。
最後に「市場から見た売り時」について考えてみたい。これについて私は常々いろいろなメディアで書いているので、ここでは簡単に説明したい。
ズバリ言えば、市場の「売り時」は今である。まず、ここ5年ほどで高騰した局地バブルエリアではすっかり天井感が出てきている。新築マンションは高すぎて売れないから値引き。中古マンションは売り物ばかりで成約が少ない。もう「どこで下落が始まるのか」という崖っぷち状態にある。何かのキッカケがあれば崩れ始めるだろう。
そのきっかけは、たとえばよく知られた金融機関の経営破たんとか、北朝鮮での軍事衝突などで十分。そうでなくても2019年の10月に予定通り消費税が増税されれば、その後にやってくる景気後退が明確な下落の合図になる。
また局地バブル以外のエリアでは、人口減少によって住宅価格がジワジワ下がっている。すでに「実質タダ」のマンションが日本国中で見ると数十万戸はあると推定する。
そして2020年の秋には東京五輪とパラリンピックが終了。さらに、その頃には日銀の異次元金融緩和が出口を探っているだろう。金利も上昇しそうだ。
つまり、この先の市場環境に不動産価格が下落する要因はあっても上昇する理由は見つからない。だからマンションを売るなら「今でしょ」ということになる。