遺骨が収まる「厨子」の表札は写真入りも選べる


「安価なタイプから売れると目算していましたが、意外にも、最多販売は130万円のタイプです。想定外のことが起きています」(永田さん)

 こういった建物の建設につきものの近隣の反対運動がまったく起きなかったのも想定外だった。事前説明会には、近隣のマンションの管理人や町内会長らが来ただけ。それも「緊急時の避難場所にしてもらえないか」との打診だったのだという。そこまで受け入れられたのは、自動搬送式の納骨堂がもう世に認知されている証なのだろうか。運営は、浄土真宗本願寺派の應慶寺(本院、渋谷区)。樹谷淳昌住職が言う。

「本院の経営は順調ですが、いずれ寺離れの時代が来ることは免れないため、先手を打ちました。郊外の霊園では、利用者が寺への帰属意識を持てませんが、館内で必ずスタッフと顔を合わせ、僧侶も常駐するこの形式なら葬式や法要の依頼にもつながります」

 館内に300人規模までの葬式が可能な荘厳な本堂や、人数に合わせて対応できる法要室も設けた。ハイグレードな土地柄と施設を武器に、9500もの基数で、スケールメリットを図っていこうとしている。

【プロフィール】1955年、奈良市生まれ。大阪のタウン誌『女性とくらし』編集部勤務後、フリー。人物インタビューやルポを中心に活動中。著書に『さいごの色街 飛田』、『葬送の仕事師たち』(いずれも新潮文庫)、『親を送る』(集英社インターナショナル)、『旅情酒場をゆく』(ちくま文庫)など。

※SAPIO2018年5・6月号

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