孔雀とインコをモチーフにしたもの


 だが、しおりの魅力は値段では測れないと猪又氏は言い切る。

「しおりは読書文化が栄えた国でそれぞれ発展しました。各国で特徴があり、あしらわれた絵や写真、素材を見れば、その国の当時の文化、技術、経済、社会情勢、生活などが伝わってきます。しおりは時代を映す鏡なのです」

 細長い紙製のものを見ると、思わず手が出るという猪又氏。映画監督として知られるスティーブン・スピルバーグ氏も「しおりコレクター」なのだという。

 小さなしおりから広がる大きな世界。今回、猪又氏の蒐集品の一部を紹介しよう。

 教会用の巨大絹製ブックマークは、現在もキリスト教の聖具店で売られている。猪又氏所有のものは長さ74.5センチ、幅7.5センチ。「聖書が聖遺物として扱われ、聖職者のみが近づけた時代、聖職者が聖衣の一部を挟んで使ったことが起源ではないかと考えられています」(猪又氏)という。

 ロシアンエナメル仕上げのしおりは、華麗な色使いだ。19世紀後半、ロシア製で、猪又氏は米国で購入した。金と黒でユリを描いたしおりは、19世紀末のもので、帝政ロシアの骨董を扱う店で入手したという。

 孔雀とインコをモチーフにしたセルロイド製のブックマークは、20世紀前半、フランス製。セルロイドは発火しやすいという欠点があり、のちにプラスチックが多用されるようになった。

※週刊ポスト2018年5月18日号

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