19世紀後半ロシア製(左)。右は19世紀末のもの


◆水戸黄門が天皇に献上した“枝折”

 一方、日本で本に挟むものを「しおり」と呼ぶようになったのは、江戸時代に入ってからとされる。漢字での表記は「枝折」「栞」「志ほり」など数通りあり、語源には諸説ある。

「木の枝を折って道しるべにする“枝折”という行為そのものは、平安時代から和歌や旅日記にも多出していました。江戸時代初期、水戸黄門(徳川光圀)が硬い紙を芯にして絹織物で包んだ板状のものを『ご本を読むのにお使いください』と後水尾天皇に献上したところ、天皇がいたく気に入り、平安・鎌倉時代の西行法師の有名な和歌から“枝折”と名づけて広まったとの逸話も残っています」

 しおり収集家でもある猪又氏は現在、1万点を超えるコレクションを所有する。

「屑みたいなものから貴重なものまで玉石混淆ですよ(笑い)。しおりほど価値に差のあるものはないでしょう。国内外の交換会、世界各地の骨董市などで探し集めていますが、逸品は少ないです。基本的に消耗品ですし、絵葉書や切手などに比べてコレクター自体が少なく、世の中にあまり出回らない事情もあります。1万円を超えるのは、金属製で美しいものが多いですね」

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