国内

横浜の保育士“一斉移籍”、保護者の涙と怒りとその顛末

横浜の保育士一斉移籍は“引き抜き”か?(写真はイメージ)

 63人──これは神奈川県横浜市が2018年4月に発表した待機児童の数である。約1070世帯に1人の子供が保育園に入れない計算になる。同市は対応策として今年度は予算1462億円を投じ、約2800人分の児童受け入れ枠を拡大する計画を実施した。この4月から新たに認可保育園32園が新設され、「待機児童ゼロ」に向けて大きく舵を切った形となった。

しかし、その中の1つ「鶴見中央はなかご保育園」は前代未聞の形で誕生している。

「職員のかたがただけでなく、私たち親子も、この保育園にかかわる人みんなが裏切られた、その一言です」

涙ながらに語るのは、横浜市鶴見区にある認可保育園「寺谷にこにこ保育園」に子供を通わせていた保護者だ。

3月末、同園は、園長と主任を含む保育士11人が一気に退職した。その結果、4月からは認可保育園にもかかわらず、運営を縮小せざるを得ない状況に陥っている。新3~5才児クラスが廃止され、37人の園児たちは市内の別の保育園への転園を余儀なくされた。多くの被害者が生まれる中、思わぬ事実が発覚した。

「寺谷にこにこ保育園」を退職した11人のうち、園長と主任を含む7人は、前述した4月に新設されたばかりの「鶴見中央はなかご保育園」で働いているというのだ。

この問題を市議会で取り上げた横浜市議の古谷やすひこ氏が解説する。

「最初に辞職を申し出た園長に続いて、1か月もしないうちに主任も辞めると宣言し、その後、数名が同じように退職願を出しました。今回の問題は、単に保育士が辞めたから保育園を縮小するという単純な問題ではない。新しい保育園を開設するにあたって既存の保育園からごっそり職員を引き抜いたということが、騒動の発端だと聞いています」

◆「子供に、『早く帰りたい。いつ元の保育園に戻れるの?』と聞かれて…」

園長をはじめとする保育士たちはなぜ子供たちを置いて新しい保育園に移ってしまったのか。「寺谷にこにこ保育園」の前園長で「鶴見中央はなかご保育園」の新園長を務めるA子さんは、本誌の取材に対し、頭を下げながらこう語った。

「途中で園を移ってしまったことでお子さんや親御さんには迷惑をかけて申し訳ないと思っています。保護者のかたからも『子供たちに一生消えない傷を残した』と言われましたし、それは本当におっしゃる通りで、恨まれても仕方ないことをしたと思っています」

だが、「引き抜きがあった」という指摘に対しては否定する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン