新潟市西区の線路上で小学2年生の大桃珠生さん(7)の遺体が見つかった事件で5月14日、小林遼容疑者(23)が死体遺棄などの容疑で逮捕された。日本中が注目した凶悪事件だが、逮捕までの1週間で、現場ではその存在を報じられない“別の被害者たち”が生まれていた。マスコミの動きやSNSなどを通じて無関係の人々が犯人視される事態が次々と生じたのだ。「サングラスの不審な男がいた」などの情報がきっかけとなり、普段からサングラスをかけた無関係な男性が疑われたりもしたのだ。
こうした現象は、凶悪事件の現場で頻繁にみられるようになった。
2007年に香川県坂出市で起きた58歳の女性とその孫姉妹が行方不明となり、その後に遺体で見つかった事件では、姉妹の父親である山下清氏がネットや一部のマスコミから「犯人扱い」された(後に58歳女性の義弟が3人を殺害し遺体を遺棄したとして逮捕された)。
3人が行方不明の間、山下氏の自宅周辺には数十人の報道陣が常に張り付き、連日のように山下氏の動向が報じられた。ネット上では山下氏を犯人と断定する書き込みが相次ぎ、情報番組の司会者からも山下氏の言動を疑う発言があった。山下氏はこう振り返る。
「違うと言っても、話したことがどんどん怪しいように受け取られ、家族全員が白い目で見られた。真犯人が出てきても、こちらの傷は一生消えない。実はあれ以来、テレビで事件報道は見ないようにしている」
2009年の「島根女子大生バラバラ殺害事件」では、2016年12月に容疑者死亡で書類送検となるまでに7年余りを要し、その間に無関係の「容疑者」を生んでいた。ノンフィクションライターの小野一光氏はいう。