馬るこが演じたのは『権助魚』。普通に演ったら10分そこそこの軽いネタだが、馬るこ版はオリジナル演出満載で20分以上。凄かったのが、権助が網取り魚を買いに行った魚屋の品揃え。「タラ」として売ってるのはメルルーサ、キャペリンの雄に卵を注入して「子持ちシシャモ」、鰻の蒲焼と称してベトナムナマズの蒲焼、芝エビではなくバナメイエビと、代用魚ばかり売ってる食品偽装魚屋だったのである。こんな発想は馬るこにしかできない。権助の台詞にブチ込まれた危ない時事ネタ(書けない!)もライヴの醍醐味だ。
定席でのトリも順調に決まってきているという馬るこ。銀賞はスタートライン、さらに金賞、大賞を狙ってほしい。なお6月1日には国立演芸場で花形演芸大賞受賞者の会があり、贈賞式もそこで行なわれる。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年6月8日号